人類の出アフリカは定説より早かった?

2011.01.27
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アラビア半島の遺跡で発見された手斧(両面と側面から撮影)。出アフリカの時期が早まる証拠とされている。

Photograph courtesy Science/AAAS
 初期現生人類の出アフリカ時期が定説より2万年早まるかもしれない。アラビア半島の太古の石器を発掘した研究者が発表した。 約13万年前、氷期の地球で温暖化が進行し、海水面が下がった。アラビア半島には航行可能な湖や河川も出現して、人類の水上移動が容易になったという。かつては乾いた砂漠だったアフリカ北部地域に中東への新たな移動ルートが生まれ、約20万年前に出現した初期人類に出アフリカのチャンスが訪れたと見られる。

 アラブ首長国連邦の砂漠遺跡で発見された約12万年前の石器類も、新説の有力な証拠となる。

 初期人類は約6万年前、ナイル渓谷や現在のエチオピア経由でアフリカを出たと考えられてきた。しかし太古の石器の発見により、現在のソマリアあたり、いわゆる“アフリカの角”から直接半島へ渡った可能性が出てきた。しかも、道具はアフリカ独特のデザインが施されているという。

 ドイツのテュービンゲン大学を退職した植物考古学者で、研究共著者のハンス・ペーター・ユルプマン(Hans-Peter Uerpmann)氏は、1月26日の記者会見で次のように話している。「出アフリカは文化面の発達が後押ししたと考えられてきたが、どうやら環境変化が主な要因のようだ」。

 太古の石器類は、アラブ首長国連邦のジャベル・フェイ(Jebel Faya)遺跡で2003年から2010年にかけ発見された。手斧など一部の道具は、以前は初期アフリカだけで見られた両面加工が施されているという。

 年代特定にはルミネセンス法を用い、石器に付着した砂粒の自然発生放射線を測定した。

 気候データについては、洞窟の石筍(せきじゅん)から太古の湖や河川の気候記録を調査し、紅海の水位変動も調べたという。比較的温暖だった約13万年前は、アラビア半島で降水量が増加。人類は、出現した河川を船や筏(いかだ)で下っていた可能性がある。

 イギリス、オックスフォード・ブルックス大学の自然地理学者エイドリアン・パーカー氏によると、この時期は紅海南部の水位が落ち込んでいたという。約4キロの航程でアラビア半島にたどり着けるため、人類にとっては海を渡る絶好の機会だったようだ。

 半島に渡った初期人類は分散し、その一部が約12万5000年前までにジャベル・フェイに達したと研究チームは見ている。

 ナショナル ジオグラフィック協会のジェノグラフィック・プロジェクトを率いる遺伝学者スペンサー・ウェルズ氏は、「非常に興味深い発見」と評している。最近は、アラビア半島の特に海底が考古学的発見のホットスポットとして注目されているからだ。初期人類が移動した時期、ペルシア湾は肥沃な河川デルタ地帯だった。

 しかし、「人類移動の歴史が書き換えられたわけではない」という。同時期の石器が以前にイスラエルで見つかっているからだ。このため、中東への移動時期が早まる可能性は前々から示唆されていた。

 また、中東への最初の移住者がわれわれの祖先である証拠もない。遺伝子もろとも既に死滅している可能性がある。ウェルズ氏のDNA調査によると、現生人類の起源は6万年前のアフリカにさかのぼる。「両者は容姿も似ていただろうし、それほど遠縁ではなかったと思う」と同氏は述べている。

 この研究成果は、1月28日発行の「Science」誌に掲載されている。

Photograph courtesy Science/AAAS

文=Christine Dell'Amore

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