惑星上の生命を焼く“悪夢”のフレア

2011.01.25
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恒星の前を通過する「ホット・ジュピター」(想像図)。

Image courtesy C. Carreau, ESA
 地球に似た惑星から生命体を見つけようとする科学者は、暑すぎも寒すぎもしない「ゴルディロックス・ゾーン」内の惑星を特に追い求めてきた。ゴルディロックス・ゾーンは、液体の水に適する条件が整った恒星の周りの領域を指し、「ハビタブルゾーン」(生命居住可能領域)とほぼ同じ意味で使われることが多い。ところが最新の研究によると、太陽系外にある既知の惑星の多くはゾーン内外を問わず、生命にとってあまりに危険な恒星を周回している可能性があるという。 人間でいえば“中年”にあたる恒星の近くを木星サイズの惑星が周回すると、恒星は突然“若者”の荒々しさを取り戻す場合がある。若返った恒星では巨大フレアが発生し、本来なら生命が居住できる惑星に危険な放射線や焼け付くような熱風、オゾン層を破壊する紫外線を浴びせる。

 関連研究でも、年老いた薄暗い恒星が近い位置で対になると、同様の現象が起きるという結果が示された。巨大フレアが発生すると、恒星の明るさが最大10%、急激に増すという。

 多くの場合、誕生から間もない恒星は非常に速く回転し、強力な磁場を作り出す。恒星の表面にさまざまな力が働き、磁力線が絡み合うことで、フレアなどの爆発が起きる。 その端的な例がこいぬ座の赤色矮星YZ CMiで、誕生から推定で数億年しかたっていない。一方、我が太陽は45億歳の“中年”である。

 YZ CMiの自転周期は2.8日で、太陽の10倍弱のスピードに相当する。ワシントン大学の大学院生アダム・コワルスキー氏によると、驚くほど激しいフレアが発生しても不思議ではない速度だという。

 実際、コワルスキー氏は2009年、巨大フレアによってYZ CMiの紫外線放射量が200倍以上に増大する様子を観測した。恒星のゴルディロックス・ゾーン内を周回する地球型惑星のオゾン層が完全に破壊されてしまう放射量だ。

 ワシントン州シアトルで1月9~13日に開催されたアメリカ天文学会の会合で、「悪夢のようなフレアだった」とコワルスキー氏は振り返った。

 恒星は時とともに自転速度を緩め、その荒々しさは弱まっていく。例えば、太陽にはいまだ活動周期があり、フレアによって人工衛星の障害や電力網の混乱を引き起こすこともあるが、YZ CMiほどの規模ではない。

 ところが、ペンシルバニア州のビラノバ大学に所属する天文学者エドワード・ギナン氏は最近、太陽とほぼ同じ年齢の恒星で、X線の巨大フレアや大きな黒点、強力なコロナ質量放出を確認した。

 K型主系列星(KV、橙色矮星)HD 189733は太陽の80%程度の大きさだが、2倍速い12日で自転。その活動レベルは6億歳くらいに相当する。

 異常なほど活動的なこの星は、離れた位置に穏やかな伴星を持つ。こちらは誕生から45億年は経っていると推定される。2つの星はほぼ間違いなく同じ時期に形成されたはずで、活動度の違いは不可解だとギナン氏は話す。

 ギナン氏によると、HD 189733が危険なまでの若さを保っているのは、木星サイズの惑星が螺旋を描きながらゆっくり近づいているためだという。この「ホット・ジュピター」は主星との距離が非常に近いため、2.2日で周回してしまう。その過程で、惑星の磁場と主星の磁場が押し合って角運動量が変わり、主星の自転が速くなるとギナン氏は説明する。

 HD 189733系に岩石でできた地球型惑星が含まれているかはわかっていない。いずれにせよ、ホット・ジュピターがHD 189733の若さを保っているため、たとえほかの惑星に生命が存在しても、破滅の運命にある可能性が高い。

 今回の発見は、生命が居住可能な天体を探す試みそのものに打撃を与えるかもしれない。現時点で確認されている太陽系外惑星は500を超えるが、その多くがホット・ジュピターである。しかも、コンピューターモデルでは、ホット・ジュピターが存在する恒星系の3分の1以上に地球型惑星も含まれているというデータが出ている。

「ホット・ジュピターを持つ恒星系をほかにも調べてみたが、多くの主星は自転周期が速く若く見える」とギナン氏は述べている。

Image courtesy C. Carreau, ESA

文=Richard A. Lovett in Seattle, Washington

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