色を認識できないことがわかった17種のサメのうちの1種、イタチザメ。

Photograph by Brian J. Skerry, National Geographic
 サメは色を認識できないという最新の研究が発表された。サメは何キロも離れた場所から血のにおいを嗅ぎつけることができるが、血が赤いことは知らないのかもしれない。 サメは数百万年も前から海で繁栄を続けている。高度に発達した眼や、脳の広大な視覚野など、優れた感覚系がその一因だ。しかし、サメが色を認識できるかどうかについては相反するデータが存在し、過去数十年間にわたって論争が続いていた。

 今回の研究では、オーストラリア東岸沖と西岸沖で捕獲されたイタチザメやオオメジロザメなど17種のサメの網膜を分析した。網膜には、動物が物を見るために光を感知する細胞が主に2種類ある。明るさの認識には桿体(かんたい)細胞が使われ、色の識別には様々な種類の錐体(すいたい)細胞が使われる。

 顕微分光測光法という手法を使用した過去の研究では、サメの近縁種であるエイとギンザメに色覚があることがわかっている。西オーストラリア大学のネイサン・スコット・ハート氏の研究チームは同じ手法を用いてサメの網膜を分析し、桿体細胞と錐体細胞に関連のある視覚色素(目の中で光を受け取るタンパク質)を調べた。

 桿体細胞はサメに最もよく見られる光受容器で、17種のサメすべてにあった。これは、明るい所でも暗い所でも物がよく見えることを示す。しかし、錐体細胞は17種中10種でまったく見つからず、他の7種には錐体細胞が1種類しかなかった。これは色の違いを識別できないことを示す。

 フロリダ・アトランティック大学ハーバー・ブランチ海洋学研究所でサメを研究する生物学者で研究に参加していないミシェル・マッコム氏は次のように話す。「サメは400種以上いるため、すべてのサメが色覚を持たないとはまだ断定できない。しかし、今回の発見は重要で驚くべきものだ。さらなる研究に拍車がかかるのは間違いない」。

 研究チームは、サメが色を認識できなくても不思議ではないと指摘する。クジラ、イルカ、アザラシなど海に住む捕食動物の多くも色覚を持たないと見られている。これは、見渡す限り青緑色の環境では色覚があってもあまり役立たないためと考えられる。

 ほかの種のサメも今回の研究結果と同じく色覚を持たないことがわかれば、人間がサメに襲われるのを防止するのに役立つだけでなく、絶滅の危機に瀕したサメが漁船の網にかかる事故を減らすのにも役立つかもしれない。

「我々の研究では、サメが対象物を見つける際に重要なのは、色そのものよりも背景とのコントラストである可能性があることがわかった。これは、サメの目を惹きにくい延縄漁用の疑似餌や、サメからコントラストが小さく見えてサメを寄せ付けにくい水着やサーフィン用具の開発に役立つだろう」と、ハート氏は声明の中で述べている。

 この研究は「Naturwissenschaften」誌オンライン版で2011年1月6日に公開された。

Photograph by Brian J. Skerry, National Geographic

文=Charles Q. Choi