ストーンヘンジに集い祝宴を開く古代人

2008.09.12
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夜空の下でそびえ立つストーンヘンジ。2008年9月に発表された最新の研究によると、ストーンヘンジの近くで発掘された先史時代の牛の化石を分析した結果、古代のストーンヘンジでは、遠方の巡礼者が家畜を連れて集まり祝宴を開いていたことが判明したという。

Photograph by Kenneth Geiger/NGS
 ストーンヘンジの近くで発掘された先史時代の牛の化石を分析した最新の研究によると、古代のストーンヘンジ地方では、遠方の巡礼者が家畜を連れて集まり祝宴を開いていたという。 イングランド南部のソールズベリー近郊にある巨石遺跡ストーンヘンジについては、古代人が遠く離れた場所から集まり重要な祝祭儀式を行っていたという学説があり、今回発掘された化石はこれを支持するものであるという。そのような祝祭は年によって開催される日が変わっていたと考えられている。

 研究チームの一員でイギリス自然環境研究会議(NERC)のジェーン・エバンズ氏は、「宗教的な祝宴で食するために解体された牛は、はるかウェールズからやって来た可能性もある」と、今週リバプールで開催されたイギリス科学振興協会科学祭(British Association Festival of Science)で発表した。

 今回の発見は、ストーンヘンジから3キロほど離れたダーリントンウォール遺跡にある石器時代後期の村で最近発掘された4500年前の牛の歯と骨に基づいている。「祝宴を開くため大勢の人がストーンヘンジ地方に移動して来たことを示す物証を手に入れた」とエバンズ氏は語る。

 研究チームは、牛の歯のエナメル質に残っていた化学元素ストロンチウムの原子の同位体を分析した。原子を分析することにより、牛が生息していた地域に関する地質学的な情報が化学的に判断できる。「ストーンヘンジ周辺を含めイングランド南部は石灰岩を大量に含む白亜質の土壌が特徴的であるが、調査の結果、1頭を除いて、この土壌範囲以外の土地で飼育されていたことがわかった」とエバンズ氏は説明する。

 そして、2頭の牛の歯は、イングランドの外部からやって来たことを示したという。エバンズ氏は「この牛たちは、比較的古い岩盤上に形成された土壌で飼育されていた。そのような岩盤は、ウェールズやスコットランドまで行かなければ見つからない。この2カ所のうち、ウェールズの方が可能性が高い。ストーンヘンジに近く、ほかにも考古学的なつながりが確認されているからだ」と語る。例えば、ストーンヘンジ遺跡自体にウェールズ南西部から運ばれてきた青石が使われている。

 今回の発見は、イギリスのシェフィールド大学の大学院生サラ・ヴァイナー氏の研究が基になっている。ヴァイナー氏の指導教官で動物考古学者のウンベルト・アルバレッラ氏は、「今回の化学分析は、先史時代の牛の出身地をピンポイントで示せるほど精密ではないが、ストーンヘンジ以外のイギリスのどこかから人々が家畜を連れてやって来たことは証明された。人々は、非常に広い範囲から集まっていた」と話す。

 さらに、古代の村から出土した牛骨を調査したところ、生まれたばかりの子牛がいないことが判明した。「家畜を飼育している場所であれば、その子どもの骨が大量に見つかるはずだが、まったく見つからなかった。だから、ここは生産する場所ではなく消費する場所だったのだと考えられる。ここは特別な目的のための場所だったと言える。人々が集い、おそらく恐ろしいほどの量のごちそうを並べて祝宴を開いていたのだろう」とアルバレッラ氏は語る。

 アルバレッラ氏の参加するストーンヘンジ・リバーサイド・プロジェクトのリーダーで考古学者のマイケル・パーカー・ピアソン氏は、「ストーンヘンジとダーリントンウォールは同じ環状構造を持つ遺跡だが、一方は石造りの柱、もう一方は木柱とその素材が示すように意味合いは異なる。祖先崇拝を尊ぶ古代ブリトン人にとって、木は生者の領域を象徴し、石は祖先の死者に結びつくものだ」と話す。

 最近ダーリントンで発見された先史時代の何百という住居跡は、特定の季節に限定された村であったと考えられている。古代多神教徒の巡礼者が冬至と夏至を祝うために訪れたのだという。

 先史時代のゴミ捨て場は、豚や牛の骨、壊れた陶器など、石器時代の祝宴の証拠にあふれている。「巡礼者たちは出身地方ごとに村の中に割り当て区域を持っていた」とする新しい学説も発表されており、家畜の化石の研究がさらに進めば、この学説を支持するものとなるかもしれない。

「現時点までの研究はまだ断片的なものだが、陶器の種類が住居跡の区域ごとに異なっているように思われる。まだ仮説にすぎないが、牛の出身地から解明できるかもしれない」とアルバレッラ氏は語る。人の歯は火葬のために残っておらず、牛の歯が貴重な手掛かりなのだという。

Photograph by Kenneth Geiger/NGS

文=James Owen in London

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