小動物のエサを拝借、シベリアの旧習

2011.01.19
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ベリーの実を食べるツンドラハタネズミ(資料写真)。

Photograph by Michael S. Quinton, National Geographic
 シベリアやロシア極東地域で暮らす人々の間には19世紀末まで、酷寒の冬を生き延びる生活の知恵として、野ネズミなどの小動物が蓄えておいた食料を“拝借”する習慣があったようだ。 最新の研究によると、ロシアやスウェーデン、ドイツの探検家たちが18世紀に残した見聞録には、野ネズミなどの小型哺乳類が集めた食料の隠し場所を、棒や鍬(くわ)、鎌などであさる人々が登場するという。当時、この地域の先住民らは大半が遊牧生活を営んでおり、狩猟や漁労、家畜飼育で生計を立てていた。

 スウェーデン、ウプサラ大学ロシア・ユーラシア研究センター(Centre for Russian and Eurasian Studies)の民族生物学者で、研究チームのリーダーを務めたイングバール・スバンベリ氏によると、彼らは農耕を行わず、もっぱら野生の植物を採集していたという。「採集すると言っても自分で直接探し歩くわけではない。野に生えた植物の根元を掘り返し、小動物が蓄えた食料を丸ごとさらっていた」とスバンベリ氏は説明する。

 隠し場所を見つけるには、巣の入り口を探すか、地面を叩く音で地中に空洞がないかどうかを見極める。調教した犬に探させるという方法もあった。また、この地域に移り住んできたロシア人やヨーロッパ人に、彼らのテクニックを伝授した。

 1カ所から根、球根、種子、木の実などおよそ13キロもの食料が見つかったこともあるというから、かなり効率的な採集方法だったと言えよう。ドイツ人のある博物学者は、人間に搾取されていた小動物たちを「哀れな農奴」と形容している。

 見つけた食料は根こそぎ奪い去り、時にはその所有者だった小動物を殺して食べてしまうこともあった。繰り返し利用できるように、エサとして少しだけ残す場合もあった。食料を奪った代わりに干魚、針、織物などを置いておく人々もいたという。

「何かお返しをしたいという気持ちが表れた、象徴的な行為なのだろう」とスバンベリ氏は話す。同氏によると、かつてはヨーロッパや北アメリカにも小動物が蓄えた食料を奪う習慣があり、メキシコのカリフォルニア湾沿岸で生活する先住民などには現在もそれが受け継がれているという。

 シベリアでは19世紀末ごろに、ロシア人入植者がジャガイモやタマネギの栽培法を持ち込んだ上、多くの遊牧民に定住を強制したため、こうした習慣はほとんど姿を消してしまった。

 今回の研究結果は、「Journal of Ethnobiology」誌の2010年秋冬号に掲載されている。

Photograph by Michael S. Quinton, National Geographic

文=Rebecca Kessler

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