淡水魚カダヤシ、ヒト並に数を認識

2011.01.11
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カダヤシはさまざまな比の数の識別実験において、人間に近いスコアを記録した(資料写真)。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic
 小さな魚といえども数える能力はあなどれない。カダヤシという小型淡水魚と大学生、算数が得意なのはどちらだろうか。ある研究で行った数の識別実験では、ほとんど同じ結果が示されたという。 メダカそっくりのカダヤシは蚊の幼虫(ボウフラ)を好んで捕食する淡水魚で、通常は群れで生活する。1匹だけになると仲間を求めて懸命に泳ぎ回る、極めて社交的な魚だ。過去の研究では、カダヤシに数を“数える”能力、すなわち数を識別する能力が備わっていることが明らかになっていた。

 今回の研究結果によると、4や8のような小さな数だけでなく、100と200のような大きな数も区別できるという。

「魚の実験ごときに科学的な成果は期待できないだろうと決め込む人は多い」と実験を指揮したイタリア、パドヴァ大学のクリスティアン・アグリロ氏は話す。「しかし、実際には極めて興味深い」。

 とはいえ、カダヤシが識別能力を発揮するには条件があるという。2つの数字に特定の関係が必要だ。それは「比率」で、人間を対象とした実験でも同じだった。

 実験では、まず一部のカダヤシを群れから隔離して訓練。大きな群れに合流できる出入り口と特定数の幾何学図形の関連付けを行った。次にそのカダヤシたちを水槽に入れた。内部には見た目が同じ2つの出入り口があり、異なる数の図形でマーキングしてある。例えば、関連付けした出入り口Aの図形は4個で、Bは8個という具合だ。

 実験の開始直後は、カダヤシたちに戸惑いが見られ無作為に選ぶ傾向が目立った。しかし、時間の経過とともに正しい出入り口を選ぶ確率が高くなったという。

 研究ではこの実験を繰り返し、しだいに使用する数を大きくした。「何百という大きな数へ切り替えると、魚たちは混乱したようで、しばらくの間は水槽の中をただ泳いでいた。しかし、新しい数を前にどちらを選べばよいかウロウロしている様子が何とも微笑ましかった」とアグリロ氏は実験を振り返る。「それでも、小さな数の場合と同じく正しい出入り口を選べるようになるまでに、長い時間は要しなかった」。

 アグリロ氏らは、図形の数をどんどん変えていった。2つの出入り口の図形数が接近すると、カダヤシが正しい選択をする確率が低下することがわかったという。例えば、図形同士の比が1:2(8と16)や2:3(8と12)だと、カダヤシは半分より高い確率で正しい出入り口を選んでいる。しかし、3:4(9と12)になると、違いを識別している様子は確認できなかった。

 カダヤシの数える能力を人間と比較するため、アグリロ氏らは、25人の学部生を対象に同じような実験を試みた。学部生たちは、2カ所に用意された多数の図形の数について、じっくり数えずに2秒以内で大小を判別するよう求められた。

 その結果、人間は全般的に魚より高い正確性を見せたものの、比率が2:3から3:4に変わると失敗しやすくなるというカダヤシと共通の傾向が見られた。

 アグリロ氏らによれば今回の研究は、人間や魚など脊椎動物が数の処理能力を共通して保持していることを示しているという。さらに元をたどれば、魚とヒトが遠い祖先でつながっている裏付けにもなるそうだ。

 この研究成果は、オンラインジャーナル「PLoS ONE」誌に12月22日付けで掲載されている。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic

文=Matt Kaplan

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