タンザニア、マハレ山塊国立公園の幼いチンパンジー(資料写真)。

Photograph by Michael Poliza, National Geographic/Getty Images
 メスの若い野生チンパンジーにも、人間と同じ“女の子”らしい一面があるとする新たな研究成果が発表された。良い母親になるための行動かもしれないという。 ウガンダ、キバレ国立公園のカンヤワラに生息するチンパンジーの個体群を調査した結果、若いメスが木の枝を人形のように抱きかかえ、母親のように世話する仕草が確認された。この行動は14年間の調査で百回以上観察されたが、オスにはほとんど見られないという。

 アメリカ、マサチューセッツ州にあるハーバード大学の生物人類学者で、研究責任者のリチャード・ランガム氏は、「木の枝に実用性はなく、単に抱えているだけだ。数分の場合もあれば、数時間の場合もあった」と話す。「日が高いのにねぐらへ持ち込んで籠もっている。しかも定期的で、木の枝以外では見られない行動だ。巣の中での“お人形遊び”も確認されている」。

 今回の調査で、野生動物の物遊びにも性差があることが初めて確認された。人間の子どもは当たり前だが、飼育下のベルベットモンキーやアカゲザルでも観察されたことがある。例えば、飼育下の若いメスザルは遊び道具として人形を好むが、若いオスはミニカーなど“男児向け玩具”を選ぶ傾向がある。

 メイン州ルイストンにあるベイツ大学の生物学者で研究共著者のソーニャ・カーレンバーグ氏は次のような見解を示す。「飼育サルのオスとメスがそれぞれ男児用と女児用の玩具を選ぶ以上、生物学的になんらかの相違があると見るのが妥当だ。ただし野生の霊長類も同じかどうかはまだわからない」。

 しかし新しい研究成果は、遊び方の性差になんらかの遺伝的要素が関わっていることを裏付けている。野生の若いチンパンジーは、物遊びをする親の姿を見る機会がないからだ。

 とはいえ、「遺伝と学習は相反する関係ではない」と研究責任者のランガム氏は言う。

 遊び方の性差を生む遺伝的要素が進化上有利に働いている可能性もある。例えば木の枝の人形遊びは、いつか母親となり、子どもを抱えて木登りやエサ取りをする場合に役立つと考えられる。ただし、種の普遍的な行動ではないため、それほど大きな進化上のメリットはないのかもしれない。

「枝の携帯行動は、チンパンジーや人間に特徴的な認識能力が遊びとして発現しただけとも考えられる。想像して楽しんでいるのかもしれない」とランガム氏は話している。

“木の実の叩き割り”や木の枝を使った“シロアリ釣り”など、特定の群れにしか見られないチンパンジーの一部の行動は、その社会の世代間で継承されているようだ。

「ただし木の枝の携帯行動は母親世代には見られず、幼児期に特有だ」と研究共著者のカーレンバーグ氏は言う。「したがって若い個体が互いを観察して学習している可能性がある。この“年少者同士の継承”はチンパンジーでは報告されたことがないが、人間では一般的な行動だ。公園では子ども達が遊びを教え合っている」。

 ハーバード大学の研究責任者ランガム氏は、「カンヤワラで観察されたチンパンジーの人形遊びは、他の個体群では確認されていない。カンヤワラに特有の行動なら、文化的なルーツもありそうだ」と指摘する。

 そして同氏は次のように続けた。「どの生息場所でも、チンパンジーのメスが子どもを重視する習性はオスより強いだろう。しかし、カンヤワラなど一部の個体群のみが木の枝を使った人形遊びを思い付いた。その理由についてこれから解明していきたい」。

 この研究成果は、12月21日発行の「Current Biology」誌に掲載されている。

Photograph by Michael Poliza, National Geographic/Getty Images

文=Brian Handwerk