北大西洋の海底に沈むタイタニック号のさびた船首(資料写真)。

Photograph by Emory Kristof, National Geographic
 海底に眠るタイタニック号の船体から新種のバクテリアが発見され、歴史上有名な沈没船の劣化をこのバクテリアが早めている可能性があることが最新の研究で明らかになった。 カナダ、ハリファックスにあるダルハウジー大学の研究チームは1991年、タイタニック号から“ラスティクル(rusticle)”と呼ばれるつらら状のさびのサンプルを採取した。ラスティクルには微生物も含まれていたが、種は特定されておらず、バクテリアや菌類などと大まかに分類されていただけだった。

 そこで同大学のヘンリエッタ・マン氏と、当時大学院生で現在はオンタリオ科学センターのバーブリーン・カウル(Bhavleen Kaur)氏は、この微生物の集合体からバクテリア1種を取り出して種を特定する研究を始めた。

 抽出されたバクテリアは新種と判明し、ハロモナス・ティタニカエ(Halomonas titanicae)と名付けられた。カウル氏によれば、同じ科のバクテリアは、タイタニック号が沈んでいる約3800メートルの深海底では見つかったことがないという。

 1912年に沈没したタイタニック号は1985年に発見されるまで、ほぼそのままの状態で海底に横たわっていた。その後、微生物や海底の海流、さらに調査活動自体が船体の劣化に拍車をかけていることが明らかになっている。

 一部では、金属を食べるバクテリアを殺して船体を海流から守ればタイタニック号を保存でき、今後も長期にわたり観光や記録映画の撮影が可能になるという意見もある。しかし、「船体の劣化の進行からも学べることはある。劣化を阻止して船体を保存すれば劣化の過程が止まってしまう」とカウル氏は話す。このような深海に生息して金属を食べる微生物を研究することで、最終的には、海上の石油掘削施設を保護する方法や船を廃棄する方法を開発できる可能性があるという。

 この研究は「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology」誌2010年12月8日号に掲載されている。

Photograph by Emory Kristof, National Geographic

文=Rachel Kaufman