驚きの新種環形動物、スキッドワーム

2010.11.25
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フィリピン沖の深海で発見され、テウティドドリルス・サマエ(Teuthidodrilus samae)と命名された環形動物。

Photograph courtesy Laurence Madin, Woods Hole Oceanographic Institution
 ゴカイか、イカか、はたまたイカを食べているゴカイなのか? 2007年、フィリピン沖の深海を調査中の無人探査艇から送られてきた映像には、長い触手、らせん状の外肢、玉虫色の“パドル”、羽毛のような“鼻”を備えた生物がとらえられていた。 アメリカ、マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋研究所の海洋動物学者ローレンス・マディン氏は、「画面にこの姿が現れたとき、いったいこれは何なんだと誰もが頭を抱えたよ」と振り返る。同氏が共著者として参加した最新の研究でその答えが見つかった。この生物は一部で予想されたとおり、奇妙な装飾を施された新種の海洋性の環形動物であることが明らかになった。

 この新種は、「Biology Letters」誌で11月24日に公開された研究で初めて詳細に論じられ、“サマのイカムシ”を意味するテウティドドリルス・サマエ(Teuthidodrilus samae)という学名も正式に付けられた。サマとは、発見された海域に近いフィリピン諸島と結びつきの深い文化の名称である。体長約9センチと比較的長いこの環形動物は、頭部がイカのような触手で覆われていることから“イカムシ(スキッドワーム)”と呼ばれていた。

 体の前部には、体長とほぼ同じ長さの呼吸のための8本の腕と、餌を捕えるのに使われる緩いコイル状の2本の外肢がある。これほどの装備でも飽き足りないかのように、頭からは6対の羽毛状の感覚器が突き出し、“鼻”の集合体として機能する。体の側面には、移動時の推進力を得るための玉虫色の“パドル”も持つ。

 ワシントンD.C.にある国立自然史博物館の環形動物担当の学芸員で研究に参加していないクリスティアン・ファウチャルド氏は、この生物が何であるにしろ「かなり派手ないでたちだね」と話す。

 外見の面白さに加えて、この環形動物が進化の移行期にある可能性をその奇抜な特徴が示していることも注目を集めている。カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の進化生物学者で研究の共著者カレン・オズボーン氏によると、この生物の生息地が2つの全く異なる環境にまたがっているため、環境に適応するために大きく進化した可能性があるという。

 テウティドドリルスは深さ2000~2900メートルの海中で確認されている。生息範囲は海底でも明るい海面近くでもなく、その中間の暗い海中だ。これまで限られた調査しか行われていないが、水中のプランクトンや栄養に富む有機堆積物を餌としていることがわかっている。

 このような奇抜な形態となった理由が何にせよ、この生物は明らかに環境に適応しているようだ。研究によると、数回の潜水調査だけで“多数の”テウティドドリウスが確認されたという。これは、その海域では個体数が多く、ありふれた生物であることを示している。

 この特異な造形は人間をも惹きつけている。少なくとも研究者にとっては魅力的なようだ。ファウチャルド氏は、「ありとあらゆる装飾を体のあちこちに施している。実に楽しいね」と語っている。

Photograph courtesy Laurence Madin, Woods Hole Oceanographic Institution

文=Traci Watson

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