米先住民とバイキングに血縁関係?

2010.11.25
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カナダに向けて出港したバイキング船のレプリカ。1991年にノルウェー沖で撮影。

Photograph from Robert Harding Picture Library, Alamy
 コロンブスがアメリカ大陸に到達したのは1492年。その500年も前に、アメリカ先住民の女性がバイキングとともにヨーロッパへ渡っていたとする興味深いDNA研究が発表された。 母親からしか遺伝しないミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析した結果、80人を超えるアイスランド人が、主にアメリカ先住民由来の遺伝子と類似した変異を持つことがわかった。この特徴は、バイキングとアメリカ先住民が初めて交雑した西暦1000年ごろに、アイスランド人の血統へ入り込んだことによる可能性が高いという。

 歴史的・考古学的な証拠から、アイスランドのバイキングは西暦1000年の直前にグリーンランドへ到達し、すぐ現在のカナダに向かったとされている。約10年現地で過ごし、ニューファンドランド島に村も作っている。

 アイスランドのデコード・ジェネティクス社とアイスランド大学で研究するアグナー・ヘルガソン氏は、「バイキングのアメリカ大陸上陸は周知の事実だ。彼らが現地の女性を、少なくとも1人連れて帰ったとしても不思議ではない」と話す。ヘルガソン氏は、研究室の学生シグリドゥア・エベネセルズドティア(Sigridur Ebenesersdottir)氏や同僚とともに今回の研究を進めた。

 しかし研究チームも、最終的な結論を出すには時期尚早だと認めている。

 研究チームは系譜学的な調査により、アメリカ先住民の遺伝的変異を保持するアイスランド人は全員、4つの家系に属すると結論づけた。元をたどると、1700年代前半に生まれた4人の女性に行き着く。

 エベネセルズドティア氏によると、4家系はアメリカ先住民のDNAを持つ1人の女性から枝分かれした可能性が高く、その女性は1700年より前に生まれたはずだという。歴史的・遺伝学的な状況から判断して、アメリカ先住民のDNAがアイスランドに入り込んだのは、少なくとも1700年より「数百年は前」だとヘルガソン氏も話す。

 ただし現時点では、1000年前にアメリカ先住民とバイキングの間に直接の遺伝的なつながりが生まれたと証明するのは不可能に近い。

 現在のアメリカ先住民は、アイスランドの4つの家系とまったく同じ遺伝的変異を保持していない。ただし、関連のある遺伝的変異はいくつも存在し、その95%がアメリカ先住民から見つかっている。

 一方、エスキモーとも呼ばれるイヌイットは、関連する遺伝的変異のいずれも保持していない。これは、グリーンランドにイヌイットが先住していたことを考えると、極めて重要な事実だ。

 こうしたデータから、アイスランドの4家系に遺伝子変異をもたらしたアメリカ先住民族は、ヨーロッパ人の入植後に滅びてしまったのかもしれないとヘルガソン氏は推測している。

 専門家によると、歴史的な記録には、アイスランドのバイキングがアメリカ先住民の女性を連れ帰った証拠は存在しないという。また、発掘調査やアイスランドに伝わる物語でも、研究論文で報告されているような個人的な関係を示唆する遺物や記述は出てきていないそうだ。「サガ」と呼ばれる物語は完全に信頼できるものではないものの、事実に基づくと考えられている。

 研究チームのヘルガソン氏も、「目の前にあるのは大きな謎だ」と認める。同氏によると、謎を解明するには、遺伝的変異の大本を突き止めるしかないという。例えば、アイスランド人の遺伝的変異と適合するDNAを含んだ古代アメリカ先住民の骨が発見されれば、解決に大きく近づく。

 研究論文は11月10日、「American Journal of Physical Anthropology」誌のオンライン版で発表された。

Photograph from Robert Harding Picture Library, Alamy

文=Traci Watson

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