トビヘビはどのように“飛ぶ”のか

2010.11.24
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シンガポールの森を滑空するトビヘビの一種(資料写真)。

Photograph by Tim Laman, National Geographic
 ヘビには空中を移動する種が存在する。枝から枝へ100メートル滑空した例もあるという。しかし、一体どのように飛んでいるのだろう? 本物とプラスチックのヘビが飛ぶ様子を撮影し、3Dモデル化する新たな研究が行われた。その結果、最適な揚力を得られる角度や体勢が判明した。 東南アジアや南アジアに生息するトビヘビ属の5つの種は、空中で肋骨をくねらせ、体を平らにする姿が目撃されている。しかし、これだけでは落下を抑制する仕組みの完全な説明にはなっていない。バージニア工科大学の生物学者ジェイク・ソチャ氏は、「体を平らにするヘビはほかにもいる」と話す。例えば、キングコブラは頭部を平らにして敵を威嚇する。

 ソチャ氏の研究チームは、4匹のトビヘビが5階建ての塔から数十メートル離れた低い塔に飛び移る姿を4台のカメラで撮影した。次に、画像から3次元のコンピューターモデルを作り、飛行中の姿勢を再現した。

 その結果、頭を上、尾を下にして、25度傾いた姿勢で滑空していることがわかった。 また、最大で体長1.2メートルのトビヘビは滑空する際、体をS字に曲げる。この姿勢が揚力を生むとコンピューターモデルは示している。続く実験でもモデルの正しさは裏付けられた。

 研究チームは、さまざまな姿勢で固めたプラスチックのヘビを水のトンネルに入れ、空気力学的な特性を調べた。「揚力を得やすいのは、まっすぐよりもS字の方だった」とソチャ氏は説明する。同氏は以前にも、ナショナル ジオグラフィック協会研究・探検委員会から資金援助を受けてトビヘビの研究を行ったことがある。

 S字の姿勢では、「体の前部に沿って生まれる空気の流れで後部が持ち上がっている可能性がある」。

 しかし、少なくとも1つの謎が残る。なぜトビヘビは落下しながら体を波打たせるのだろうか? 「波打つ動きが体の上に空気の流れを生み、滑空を維持する助けになっているのかもしれない」とソチャ氏らは仮説を立てている。「体の上部での圧力が減り、下部との圧力差が拡大する。つまり揚力の一種だ」。

 トビヘビが滑空する仕組みが解明されれば、将来的には滑空する無人兵器などの性能向上につながるかもしれない。今回の研究は、アメリカ国防総省の研究機関である国防高等研究計画局(DARPA)から資金援助を受けている。

 ただし、ソチャ氏は次のように述べている。「DARPAは応用的な見地からこの研究に関心を持ったわけではない。あくまで基礎科学の視点から関心を示しており、応用の可能性は付随的なものだ」。

 この研究結果は11月22日、アメリカ、カリフォルニア州ロングビーチで開催されたアメリカ物理学会流体力学部門の会合で発表された。24日発行の「Bioinspiration & Biomimetics」誌にも掲載されることになっている。

Photograph by Tim Laman, National Geographic

文=Ker Than

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