地球のプレートは数十億年にわたって移動しながら超大陸の形成と分裂を続け、その原動力は“吸引力”であるというのがこれまでの説だった。環太平洋火山帯地域のような地殻変動が活発な場所において、“沈み込み”と呼ばれるプロセスで地殻のプレートが地球内部に引き込まれ、それに応じて大陸同士も引き寄せられて衝突するというものだ。
しかし今回の研究では、カナダの聖フランシスコ・ザビエル大学のJ. ブレンダン・マーフィ氏らによって、太古の太平洋中央部に地球の核にぶつかるほど深部まで地殻が“沈み込む”プルームがあったことが示唆された。沈み込んだ部分は過熱状態となって再びわき上り、スーパープルーム(巨大対流)を作り出す。そして、古代の大陸を吸い寄せるのではなく、押し付けて再結合させた結果、パンゲア大陸が誕生したというのだ。
地球は約45億年前に誕生したとされているが、以後10億年以上にわたって繰り返されてきた超大陸の形成と分裂のサイクルは、岩の種類や化石の比較、地磁気の変動の調査で追跡することができる。パンゲア大陸の前には、ロディニア大陸とゴンドワナ大陸という2つの超大陸が存在し、数億年前に形成されて分裂したことが解明されている。
今回の研究では、パンゲア大陸形成を“吸引力”で説明すると矛盾が生じることが指摘された。
「パンゲア大陸がゴンドワナ大陸の断片から形成された過程には2つの段階があったことが地質調査から明らかで、この点が問題だ」と前出のマーフィ氏は語る。この過程の最初の段階では、ゴンドワナ大陸が割れてその中心部に新しい海洋ができ、その海洋が徐々に広がっていった。これは現在、パンゲア大陸から分離した大陸が大西洋で分割されているのと同様の現象である。
しかしその後の段階では、なんらかの変化が生じて海洋は拡大を止め、収縮を始めた。そして、ゴンドワナ大陸の断片同士は来た道を戻るかのように激突した結果、パンゲア大陸が形成された。“吸引力”を原動力とする説で考えれば、海洋は収縮せずにそのまま拡大を続けていたはずだ。
拡大を続けずに伸縮しているという説はウィルソン・サイクルと呼ばれ、40年以上前から指摘されていたが、その原動力は明らかにされていなかった。さらに現在、この動きの原因として唱えられているモデルを5億年前の地球に当てはめてみても、パンゲア大陸は正しい配置に収まらないのだ。
今回、大陸を引き寄せるプロセスにスーパープルームが干渉しているという説が出されたことで、この矛盾が解決することになるかもしれない。それにはこの説をさらに裏付けるデータが必要になるが、「この説に基づけば、地球の長期的未来の姿も明らかになるかもしれない」とマーフィ氏は述べている。
Image courtesy D'Arco Editori/Getty Images