アフリカ以外で最古の現生人類を発見

2010.10.26
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中国の洞窟で見つかった早期現生人類のアゴの骨と臼歯。

Diagram courtesy Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology, Chinese Academy of Sciences
 中国南部で驚くべき化石人骨(アゴの骨)が見つかった。現生人類がアフリカを出た時期が、定説より大幅にさかのぼる可能性がある。 2007年、広西チワン族自治区の崇左市(すうさし)のジーレン(Zhiren)洞窟で人骨は発見された。下顎骨は先端が突出しており、はっきりと現生人類の特徴を備えている。しかし注目すべきはその年代だ。中国でこれまで最古とされてきた現生人類(ホモ・サピエンス)の化石よりさらに6万年もさかのぼるという。

 研究共著者でアメリカ、ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学の人類学者エリック・トリンカウス氏は、「約10万年前の化石で、アフリカ以外で発見された最古の現生人類だ」とコメントしている。

 これまで、ホモ・サピエンスの出アフリカは約6万年前が定説だった。その後、世界中で初期人類ホモ・エレクトスやホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)などと置き換わるのに、それほど時間はかからなかったと考えられてきた。

 中国で見つかった早期現生人類の化石は、人類の移動の歴史を大幅に塗り替えるかもしれない。また中国の現生人類は5~6万年間も別のヒト属と混在し、異種交配が行われていた可能性さえある。

 加えて、解剖学的に「現生」に属する人類は、人間らしい活動を始めるかなり以前に中国へたどり着いていた可能性も示唆されている。例えば、物や人、出来事をビーズや描線などで表現する「表象的思考」は人間の特性であるが、中国の考古学的資料でその特性が確認できるのは約3万年前だ。

 ハワイ大学の人類学者クリストファー・バエ(Christopher Bae)氏は、今回の研究を受けて次のようにコメントしている。「出アフリカの時期に関するこれまでの定説は、主に遺伝学的証拠に基づいている。新発見のアゴの骨はその定説に別の側面から挑戦状を叩きつけた。年代がはっきりしており、ほぼ現生人類と見て間違いない証拠も備えている」。

 一方で、アメリカにあるウィスコンシン大学マディソン校の人類学者ジョン・ホークス氏は次のような見解を示している。「中国の洞窟からはアゴの骨と3本の臼歯しか見つかっていない。しかも現時点では、ネアンデルタール人の骨である可能性も残されている。人類の移動の歴史に関する再考の必要性は、今後の展開次第だろう。個人的には研究チームの主張に賛成だが、もっと証拠が欲しい。化石からDNAを抽出できればいいのだが」。

 研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に10月25日付けで掲載されている。

Diagram courtesy Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology, Chinese Academy of Sciences

文=Rachel Kaufman

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