インド山岳地帯で未知の言語を確認

2010.10.06
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インド北東部、アルナーチャル・プラデーシュ州のコロ語を話す少数民族。

Photograph by Chris Rainier, National Geographic
 インド北東部、アルナーチャル・プラデーシュ州の山岳地帯で、まったく未知の言葉を話す少数民族を言語学者チームが確認した。 その言語はチベット・ビルマ語族に分類されるコロ語(Koro)だ。住民が住む山岳地域は中国との国境紛争地帯で立ち入りが厳しく制限されており、これまで言語学調査の“空白地帯”だった。東アジアから南アジアにかけて分布するチベット・ビルマ語の系統には、400種類近い言語が属しており、インドでは150種類が使われている。ナショナル ジオグラフィック協会の絶滅言語救済プロジェクトに参加した調査チームによると、コロ語はそれらいずれの言語とも異なっているという。

 コロ語の存在が明らかになったのは2008年。ある少数民族の間で話されているアカ(Aka)およびミジ(Miji)という言語を聞き取り調査していた学者チームが、音がまったく異なる別の言語に気がついた。

 消滅の危機にある少数言語の調査を行っているグレゴリー・アンダーソン氏は、「コロ語はこれまでまったく知られていなかった」と話す。アンダーソン氏によると、コロ語を話すのはわずか800人程度で、その大半は20歳以上。しかも彼らは文字を持たないため、いずれ消滅する恐れがあるという。

 コロ語を使う人々がどのようにしてアカ族と生活を共にするようになったのか、詳しいことはわかっていない。だが、コロ語とアカ語がまったく異なる言語であることは確かだ。

 両言語を比較すると、発音の種類や単語および文の構成法に大きな違いが見られる。例えば「山」は、アカ語で「フー(phu)」、コロ語では「ニョ(nggo)」と言う。また「豚」のアカ語は「ヴォ(vo)」で、コロ語は「レレ(lele)」だ。両言語に共通する語彙は、全体のおよそ9パーセントにすぎない。スワースモア大学の言語学者デイビッド・ハリソン氏はこう述べる。「コロ語とアカ語の発音には、英語と日本語ほどの違いがある」。

 だがハリソン氏によると、コロ語とアカ語のどちらの話者も、共通言語を持たないにも関わらず、互いの言葉に違いがあるとは考えていないという。前出のアンダーソン氏は、民族的な差異を認識しないほど同化した2つの種族の中に、別々の言語が共存していることは非常に珍しいと話す。

 複数の言語が併存するこうした環境では通常、少数派言語は多数派に駆逐され、やがては消滅してしまうものだ。消滅を免れるには、話者が自分たちに固有のアイデンティティを主張する必要がある。

 だが国境紛争の影に怯えながら暮らす村では、少数派も多数派の区別もなく、コロ語とアカ語も方言のわずかな違いぐらいとしかとらえていない。ハリソン氏はこう語る。「現地の人々は言語上の差異にあまり関心がないようだ。しかし、コロ語とアカ語は根本的に異なる言語である」。

 今回の発見について近く「Indian Linguistics」誌に発表予定のアンダーソン氏は、「言語学上なによりも重要なことは、コロ語の起源を突き止めることだ」と話している。「コロ語を話すグループがアカ族に同化した時期やその経緯について、首尾の整った論文を学界に提出することがわれわれの急務だ。チベット・ビルマ語族の他言語の専門家も交えて議論が活発化することを期待したい」。

Photograph by Chris Rainier, National Geographic

文=Dan Morrison

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