古代の巨大ペンギン、白黒ではなかった

2010.09.30
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古代の巨大ペンギン「ウォーターキング」は赤茶と灰色の羽を身にまとっていた(想像図)。

Illustration courtesy Katie Browne, U.T. Austin
 3600万年前の地球には、現生種とはいささかイメージの異なるペンギンが生息していた。人間の背丈と変わらぬ体長で、赤茶と灰色の羽を身にまとっていたという。 新種の古代ペンギンは、「ウォーターキング(学名:Inkayacu paracasensis)」と名付けられた。鳥の進化の研究に新たな側面が加わるのではと期待されている。まず、ペンギンの体色が白黒に変化した時期は、比較的最近であることを示す直接的な証拠が発見された。加えてその変化が、繁殖やカモフラージュより泳ぎに深く関係している可能性も浮上した。

 2007年、ウォーターキングの化石は少なくとも2種の巨大ペンギンと一緒にペルーで出土した。今年の9月30日の発表によると、最近になって研究所の職員がウォーターキングの翼部に生えていた羽と胴体部分を覆っていたウロコ状の小さな羽を複数発見したという。現生の最大種コウテイペンギンでも体長は120センチに届かないが、この古代ペンギンは150センチにも達する。

「翼の先端が灰色、翼の裏面が赤茶色だった」と、研究責任者でアメリカにあるテキサス大学オースティン校の古生物学者ジュリア・クラーク氏は説明する。ただし羽のサンプル数が不十分で、全身の配色を確定するには至っていない。

 ノースカロライナ州立大学の鳥類古生物学者で共同研究者のダン・ケプカ(Dan Ksepka)氏はこう解説する。「この資料だけでは全身の色はわからない。イワトビペンギンなど一部の現生ペンギンは目や首の周りに明色の筋が入っているが、ウォーターキングは見当も付かない。しかし骨化石から判断してこの個体が成体だったことは間違いない。幼体ならともかく成体の茶色や灰色は予想外だった」。

 研究チームは、羽の化石と現生ペンギンやその他の鳥類との比較材料に、メラノソーム(色素を含む細胞内小器官)を利用した。化石のメラノソームの形状と大きさから、元々の羽の色を特定できたという。

 古代ペンギンの特定部位の羽が発見されたのは今回が初めて。また、現在の独特の体色に変化した時期が、比較的最近であることを示す直接的な証拠を掴んだのも同様だ。

 では、ペンギンがタキシードを思わせる白黒の体色に変化した理由は?

「アザラシなど捕食動物の出現も1つの理由として考えられる」と、研究責任者のクラーク氏は指摘する。あの体色には、カウンターシェイディングと呼ばれるカモフラージュ効果があるという。捕食動物が下から見上げた白い腹部は、明るい空に溶け込んでしまう。逆に黒い背部は暗い深海と同化して発見率が下がるという訳だ。

 メラノソームの分析結果でも、タキシード色への変化は水中で過ごす時間が増えた結果だった可能性が示唆されている。ウォーターキングのメラノソームは、コマドリやキンカチョウなど赤茶や灰色の羽を持つ現生鳥類と構造や組織が類似していた。しかし現生ペンギンのメラノソームは大きく異なり、もっと大きく丸みがあり、ブドウの房のようにぎっしり詰まった構造をしている。

 ペンギンの羽はメラノソームの変質で強化されたのではないかと研究チームは推測している。その変化がきっかけで、アザラシのひれ足のような泳ぎに適した翼を獲得できた可能性があるという。

 クラーク氏はこう説明する。「体色の変化は、必ずしもメラノソームと直接的な関係がないのかもしれない。ペンギンの生態に起こった何らかの変化が原因だった可能性はまだ残っている。それは何かと聞かれても今は答えられないのだが」。

 この研究成果は「Science」誌のオンライン版に9月30日付けで掲載されている。

Illustration courtesy Katie Browne, U.T. Austin

文=Ker Than

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