絶滅危機のパンサー、交雑で回復傾向

2010.09.27
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アメリカのフロリダ州にあるエバーグレーズ国立公園で保護飼育されている3頭のフロリダパンサーの子ども(2006年6月撮影)。

Photograph courtesy Science/AAAS
 最新の研究によると、ピューマの一種で絶滅の危機にあるフロリダパンサーをテキサス州のピューマと交配させた場合、“アーノルド・シュワルツェネッガー”のように力強い交配種が誕生するという。 研究チームの一員でアメリカのメリーランド州フレデリックにあるアメリカ国立癌研究所(NCI)ゲノム多様性研究室の動物遺伝学者スティーブン・オブライエン氏は、「アクションスターのようにタフな子孫がフロリダパンサーを救ってくれる可能性も十分にある」と話す。

 ピューマは南北アメリカ大陸に広く生息する大型ネコ科動物で、地域によってパンサーやクーガー、マウンテンライオンなどとも呼ばれる。フロリダパンサーもピューマの一種である。

 かつてアメリカの東南部に広く分布していたフロリダパンサーだが、19世紀以降は狩猟の対象となり、20世紀初頭までにほとんどの生息地から姿を消した。わずかに残った個体もフロリダ南部の過酷な湿地帯へと追いやられてしまう。小規模な集団内での近親交配により、心臓や生殖機能の欠陥が目立ち始めた。そして、21世紀初頭にも絶滅する恐れがあると判断され、米国魚類野生生物局により絶滅危惧種に指定されている。

 1995年、アメリカ政府は最終的な手段として、テキサス州に生息していたメスの野生ピューマを8頭、フロリダ州に放った。

 その結果、フロリダパンサーは3倍の約100頭にまで増加した。また、生まれた子どもたちも遺伝的な多様性を備えており、力強く寿命も長いことが明らかになっている。

 オブライエン氏の研究チームは、1980年代初頭以降、一部のフロリダパンサーに対して詳細なモニタリング調査を続けてきた。無線装置やマイクロチップを中心に、時には麻酔で眠らせて血液のサンプルを採取するといった手法を採用している。サンプルを分析した結果、テキサス州からのピューマの導入以降、DNAの多様性が大幅に増大していることが判明した。

 また、研究チームは、子どもと大人のフロリダパンサーの生存率も計測している。 例えば、1歳以上の純血の個体は2002~2004年の間に29頭のうち23頭が死んでいるが、交配種47頭は22頭だけだった。

「フロリダパンサーの健康状態や生存能力についても計測を行っている。健康状態を測る一風変わった指標としては、研究者が追い立てて木に登らせ、その後、どのような行動を取るか調べるというものがある」とオブライエン氏は話す。

 純血のフロリダパンサーの場合、ほとんどが木の上ですくんでいるだけだった。しかし、交配種の場合、純血種に比べ2倍以上の頻度で木からジャンプし、研究者の頭を跳び越えて難を逃れたという。

「ほとんどすべての指標で交配種の方が優れていた。ある意味、人間がかつて遮断した遺伝子の交流が、テキサス州のピューマを放つことで回復されたといえる。19世紀には、フロリダパンサーはたまに西部のピューマと交配し、自然に“遺伝子トランプ”をシャッフルしていたのだ。今回の方法は、ライオンとトラの組合せのような不自然な交配とは異なる」。

 オブライエン氏は次のように続ける。「絶滅危惧種に新しい遺伝子を持ち込む方法は、非常にうまくいっている。決して難しい理屈ではない。生息地が十分にあり、近親交配も少なければ、長い歴史の中で生存と繁栄につながる進化を続けるのは自然なことだ」。

 ただし、フロリダパンサーの未来はまだ安心できない。野生生物保護団体ディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ(Defenders of Wildlife)でフロリダ州部門を担当するエリザベス・フレミング氏は、次のように話す。「今回の実験は非常に思い切ったものだったが、はっきりとした成果が出ている。しかし、本当の問題はこれからだ。現在の生息地を保護することは当然だが、以前の範囲まで回復しなければならない。100頭では自然繁殖が可能な個体数には物足りない。フロリダパンサーが安定して繁栄していくには、生息範囲をフロリダ州の他地域へも拡大する必要がある」。

 そのため、フレミング氏たちは土地を購入して保全に乗り出すなどの活動を続けている。「新しい領域に行動範囲を広げるオスも現れ始めた。ある1頭は、フロリダ州の北に隣接するジョージア州まで到達していた」と話す。「ただ、シカ狩りのハンターの一撃にやられてしまったけれど」。

 今回の研究成果は、9月24日発行の「Science」誌に掲載されている。

Photograph courtesy Science/AAAS

文=Christine Dell'Amore

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