毒餌ネズミを空中投下、グアムの蛇対策

2010.09.27
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アメリカのフロリダ州にあるエバーグレーズ国立公園で保護飼育されている3頭のフロリダパンサーの子ども(2006年6月撮影)。

Photograph courtesy Science/AAAS
 アメリカ領のグアム島で今月初め、死んだネズミに薬を詰め込み、ジャングルの林冠(森林の上層部)に空中投下する実験が実施された。侵略的外来種のヘビを駆除する狙いがあるという。 アメリカ政府が支援するこのプロジェクトでは、アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤の有効成分)を濃縮した錠剤を親指サイズの死んだネズミに詰め込み、問題のヘビ「ミナミオオガシラ」を駆除する毒餌として使用した。

 アセトアミノフェンは人間には痛みや発熱を抑える効果があるが、ミナミオオガシラが摂取すると、ヘモグロビン(血液中のタンパク質)が肺から全身へと酸素を運搬できなくなる。

 米国農務省(USDA)野生動物局の研究員ピーター・サバリエ(Peter Savarie)氏は、「昏睡状態からやがて死に至る」と話す。同局では国防総省と内務省の資金援助の下、1995年からこの駆除手法を研究してきた。

 アセトアミノフェン80ミリグラム程度で、ミナミオオガシラの成体1匹を駆除できる。80ミリグラムは、人間の子どもが解熱剤として1度に服用する量と同じだ。毒餌ネズミを飲み込んだミナミオオガシラは、通常は60時間で死に至るという。

 ミナミオオガシラは、オーストラリアやパプアニューギニア、太平洋諸島を原産とする樹上性のヘビで、主に鳥やトカゲ、コウモリ、小型の哺乳類を捕食する。

 グアムには、第二次世界大戦後にソロモン諸島から船荷にまぎれるなどして非意図的に移入されたと考えられている。その後、この侵略的外来種によって数種のグアム固有生物が絶滅や激減に追い込まれた。

「樹上に生息するミナミオオガシラは夜行性の捕食動物だ。もともとヘビがいない島で、それまで天敵が存在せず警戒心の薄かった固有種は格好の餌食となってしまった」と、野生動物局のダン・バイス氏は説明する。

 科学者たちは長年にわたり、この有害爬虫類への対策を研究してきた。わなの設置やヘビ探知犬の調教、空港や港湾のフェンス周辺を夜間にスポットライトで監視する方法などさまざまだ。ほとんどの対策では、ミナミオオガシラをグアム島内に留めることに主眼を置いてきた。出航する船に侵入でもしたら、ハワイなど別の島でも同じ惨事が繰り返されてしまうからだ。

 しかし今回の対策は、水際ではなく、ミナミオオガシラの主な生息地であるジャングルで展開される。「グアム島全体にはびこっていると誤解されているが、実際にはほとんどがジャングルに生息している。人間がなかなか足を踏み入れないようなところだ」と、野生動物局のバイス氏は語る。

 空中投下するネズミには、2枚の厚紙片を1.2メートルの紙製リボンで繋いだ“吊り具”を取り付けた。この仕掛けには、ミナミオオガシラが生息する樹木の上部に毒餌を引っかける目的がある。地面まで落ちると、オオトカゲなど対象外の生物が誤って食べてしまう可能性があるためだ。

 2010年9月1日、USDAはグアムの海軍基地周辺で小規模の空中投下を実施、200匹ほどの毒餌ネズミを約8ヘクタールのジャングルにばらまいた。今回が2度目の投下で、2010年内か2011年初頭に予定される大規模な実地試験へ向けて改善点を探るために実施された。投下した一部のネズミには、追跡調査のために発信機を取り付けてあるという。

 ワシントン州シアトルにあるワシントン大学の生物学者ハルドレ・ロジャーズ(Haldre Rogers)氏は今回の実験結果を受けて、「毒餌ネズミはミナミオオガシラの駆除に効果があるようだ。特に中型以上の成体に有効だ」とコメントした。同氏は、鳥類の減少がグアムの天然林へ与える影響を調べている。

 ロジャーズ氏は課題も指摘した。「毒餌ネズミの手法を含め、現在の対策で個体数のコントロールは可能だが、根絶やしにすることはできない。残念ながら、決定的な対策はまだないと言わざるをえない」。

 USDAでは将来的に、毒餌ネズミから非生物学的な手法へ切り替えたい意向だ。ミナミオオガシラが食べるもので、腐敗したり、ハエやアリ、ウジがたかったりしないようなエサが好ましいという。

Photograph courtesy Science/AAAS

文=Ker Than

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