地球のマントル深部に液体マグマ層?

2010.09.24
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ハワイのキラウエア火山で、溶岩洞の開口部から溶岩が顔をのぞかせる(1991年撮影)。

Photograph by Roger Ressmeyer, Corbis
 地球が誕生した時にできたと思われる高温の液体マグマの層が地下2900キロに存在する可能性があることを示す新しい研究が発表された。 この研究結果は、固体の下部マントルにかつて“マグマの海(マグマオーシャン)”があり、その痕跡が現在でも2つの層に挟まれて存在しているという説を裏付けるものだ。

「いくつかのモデルでは初期の地球の全体またはほとんどが液体だったとされており、この液体状態の痕跡と思われるものを探す研究が各地で進められている」と、研究の共著者でフランスのピエール&マリー・キュリー大学(パリ第6大学)凝集媒体鉱物学物理学研究所のギョーム・フィケ氏は話す。

「これらのモデルでは、時間が経過して地球が固体化するにつれて、溶岩の一部がマントルと核の境界の底部に閉じ込められたとされている」。

 フィケ氏の研究チームは、この境界部分に存在する極めて大きな熱と圧力が、地球のマントルに存在する物質に加わるとどうなるかを調べる実験を行った。この実験の結果は、地球の内部構造に関する理論に影響を与えるだけでなく、地球の核と接するマグマのプルームから溶岩を噴き出している火山が存在する可能性をも示すものだ。

 地震波が地中を伝わる速度の分析結果から、地球の核は固体の鉄の球(内核)を液体の鉄の層(外核)が覆っていると考えられている。核の上には、固体の下部マントル、上部マントル、地殻がある。

 外核の回りにあると考えられる液体の層は、地下およそ2900キロで下部マントルに接している。核とマントルの境界部分の温度は4000ケルビン(摂氏3727度)前後で、圧力は標準的な海面気圧の140万倍にあたる約140ギガパスカルである。

 地球の深部から直接サンプルを採取する方法がないため、マントルの境界部分の岩が固体か液体かを確実に知ることはできない。しかし、核とマントルの境界付近で地震波の速度が急激に遅くなることが以前からわかっており、この領域が部分的に液体だとの説の根拠となっていた。

 フィケ氏の研究チームは地下の極限環境をシミュレートするために、マントルを構成する代表的な物質のサンプルとして、酸化マグネシウム、鉄、シリコンをダイヤモンド・アンビルセルに入れた。この装置は、2つのダイヤモンドの間に微小なサンプルを挟んで数百万気圧までの超高圧をかけることができる。

 強く圧縮するとサンプルの温度は5000ケルビン(摂氏4726度)を超え、圧力は140ギガパスカルに達した。次に、X線回折と呼ばれる技法を使用してサンプルの原子構造を調べ、物質がどのタイミングで固体から液体に変化するかを分析した。するとこれらの鉱物は、核とマントルの境界部分の温度とほぼ同じ4200ケルビン(摂氏3926度)で溶解を始めた。

 フィケ氏は、液体である可能性がある地下深くの層を指す言葉として“マグマオーシャン”という表現を用いるべきではないと警告する。「基本的に認識すべきことは、マントルは固体の岩石だが、底部が部分的に液体である可能性もあるということだ」。

 それでもこの実験結果は、地球内部の液体の物質がどのようにして冷やされ、長い年月をかけて複数の層に分離したのかを理解する上での化学的な指標となるかもしれないと研究チームは期待する。

 また、今回の研究は火山研究にも影響を与えそうだ。環太平洋火山帯の火山をはじめとする多くの火山は地殻構造プレートが互いに接する地点にあり、上部マントルが溶解してできたマグマで満たされている。

 一方でハワイに見られるようないわゆる“ホットスポット火山”は、上部マントルよりもさらに深くから噴き上がる高温の岩石プルームが溶岩の供給源となっていると考えられている。

「このプルームは、核とマントルとの境界の部分的に溶解した非常に高温な領域から発生するのだろう」とフィケ氏は推測する。「しかし、このプルームとそれに伴う火山作用との関連性を明確にするためには、核とマントルの境界部分にあると思われる個々の要素をすべて分析する必要がある」。

Photograph by Roger Ressmeyer, Corbis

文=Brian Handwerk

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