ネアンデルタール人は火山噴火で絶滅?

2010.09.24
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女性のネアンデルタール人の頭蓋骨(資料写真)。

Photograph by Kenneth Garrett, National Geographic
 かつてのヨーロッパで起きた壊滅的な火山噴火によって、ネアンデルタール人は絶滅に追い込まれたという新説が発表された。一方で、現生人類はアフリカやアジアに居住圏が広がっていたおかげでこの危機を切り抜けていたという。 約4万年前、現在のイタリアやコーカサス山脈(アジアとヨーロッパの境)に相当する地域で火山が相次いで噴火した。

 研究チームは噴火の影響を受けた地域の花粉と火山灰を分析した結果、噴火によってその地域のネアンデルタール人がほぼ絶滅するほどの打撃を受け、ほかの地域に広がっていた集団にも間接的に影響を与えた可能性があると結論付けた。

 また、ロシア、黒海沿岸のメズマイスカヤ(Mezmaiskaya)洞窟にある約4万年前の堆積層を調べたところ、火山灰が多い地層ほど花粉の含有量が少ないこともわかっている。

 研究チームのメンバーでテキサス大学アーリントン校の人類学者ナオミ・クレッグホーン氏は次のように話す。「すべての地層で火山灰の特徴について調べた。その結果、現在のナポリ近郊で発生した“カンパニアン・イグニンブライト噴火(Campanian Ignimbrite eruption)”の時期に当たる火山灰が最も豊富な層は、樹木花粉が存在せず、植物の花粉もほとんどない不毛な地層だった」。

 植物が減少すると草食哺乳類の数も減少するため、大型哺乳類を食料にしていたネアンデルタール人にも影響が及んだと考えられる。「ネアンデルタール人の絶滅の原因としてこのような環境的要因を指摘する説は以前にも発表されていたが、私たちは具体的なメカニズムを解明しようとしている」とクレッグホーン氏は話す。

 その他の理論では、競争、戦争、異種交配などを通じて現生人類がネアンデルタール人の絶滅に重要な役割を果たしたとされているが、今回の火山噴火説が正しいとすれば、彼らはもっと悲劇的な終焉を迎えていたことになる。食料源が失われた冷たく荒涼とした地で、ゆっくりと滅びていったのだ。

 ネアンデルタール人は氷河期を何度も生き延びた頑健な種であり、火山などの自然災害にも慣れていた可能性もある。だが、約4万年前の噴火はその種の災害とは規模が違っていたという。

 例えば、複数の火山がほぼ同時期に噴火していたことが挙げられる。中でもカンパニアン・イグニンブライト噴火はヨーロッパでは過去20万年間で最も大規模だったようだ。

「数世代にわたって起きるような事象なら適応しやすい。ほかの場所に移動して居住地を見つければ良い。人口も回復できる。だがこの噴火は異例の出来事だった」とクレッグホーン氏は解説する。

 当時のヨーロッパには現生人類の小集団も住んでいたので、噴火の影響を同様に受けたと考えられる。だが、ネアンデルタール人のほとんどがヨーロッパに居住していたのに対し、現生人類はアフリカやアジアにより大きな人口を抱えていたため絶滅を避けられたようだ。

「ネアンデルタール人はそれぞれの集団の規模が小さく、人口の大きな供給源がなかった。噴火後に人口を回復するには人数や密度が足りなかったのだ」とクレッグホーン氏は補足した。

 一方で研究チームは、火山噴火説に欠点があることも認めている。例えば、噴火が起きたのは数カ月、数年、数十年のうちどの程度の期間なのかなど、時系列をさらに詳しく定義する必要がある。「今のところ、噴火の正確な時期を100年以下の単位で特定するのは不可能だ」とクレッグホーン氏。

 また、ネアンデルタール人が絶滅に至った期間や噴火後に現生人類がヨーロッパに大挙して居住し始めるまでの期間についても、正確には解明されていない。

 コロラド大学の人類学者ジョン・ホフェッカー(John Hoffecker)氏は、噴火のかなり前の時点で、現生人類は既にヨーロッパでネアンデルタール人よりも勢力を拡大し始めていたと指摘する。

 ネアンデルタール人の拠点だった場所でも現生人類の遺物が発見されており、その点から判断すると、「4万年前には、現生人類はイタリアなどネアンデルタール人が居住していた特定の地域を占有していたため、ネアンデルタール人はそれ以前に苦境に陥っていたはずだ。勢力が衰えた原因は他にある」と語る。

 おそらく、火山噴火は最後の一撃になっただけなのではないかと同氏は付け加える。「ただ、事実かどうか確信は持てないが、年表と照らして考えた場合に有望なシナリオであるということは言えそうだ」とホフェッカー氏は述べている。

 今回の研究は「Current Anthropology」誌10月号に掲載される。

Photograph by Kenneth Garrett, National Geographic

文=Ker Than

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