アマゾンに広がる古代都市ネットワーク

2008.08.28
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アマゾンの古代都市ネットワークを示す地図。権力を示す中央の玉座から放射状に伸びた村の盛り土に沿って線が引かれている。現在、2つの古代都市が確認されており、上の写真は南側の古代都市のもの。

 コロンブスが到着する以前、原始的な熱帯雨林が広がるブラジルのアマゾンには、町や村がかなりの密度で整然と造られていたようだ。2008年8月下旬、人類学者チームがその地図を完成させたと発表した。

Map courtesy Science/AAAS
 コロンブスが到着する以前、ブラジルのアマゾンには、町や村がかなりの密度で整然と造られていたようだ。8月28日、人類学者チームがその地図を完成させたと発表した。今回の研究によると、ヨーロッパ人入植者が到着する以前、“原始的な”熱帯雨林が広がる広大な土地には、実際には洗練された都市景観があった可能性があるという。 研究チームの一員でフロリダ州ゲインズビルにあるフロリダ大学の人類学者ミヒャエル・ヘッケンベルガー氏は、「通常の都市モデルから想像できるものとはまったく異なる姿がそこに存在した。それでも、地域全体に数多くの定住地があり、その内部構造や各拠点の関係には一定したパターンがある。中世ヨーロッパの都市に比肩するような、計画的で秩序立った社会が存在していたと考えることができる」と話す。

 近年、「かつてアマゾン川流域には大規模な社会が数多く存在していたが、15~16世紀にヨーロッパ人入植者らが持ち込んだ病気のために、そうした社会はほぼ消失した」とする学説が論争を巻き起こしているが、今回の発見はこの学説を支持するものだ。

 この学説によると、今日アマゾンに残っている孤立した部族は、かつての偉大な社会の最後の生き残りだということになる。研究チームは「この学説が正しいとすると、古代定住地のネットワーク構造の研究が進めば、今日アマゾンに残っている先住民族や森林の保護管理のあり方を改善するヒントが得られるかもしれない」と語る。今回の研究チームには、ヘッケンベルガー氏などアメリカからの研究者だけでなく、ブラジル人研究者やアマゾンの先住民族であるクイクロ族の人々も参加している。

 1993年、ヘッケンベルガー氏は、アマゾン川支流のシングー川の源流近くに住むクイクロ族と生活を共にした。滞在から2週間、ヘッケンベルガー氏はこの地に古代の定住地があることを知り、以後15年かけて詳細に調査し、古代都市ネットワークの地図を作成した。

 現在までのところ、ヘッケンベルガー氏は、町や村などの定住地が集まる主要な“政治都市”を少なくとも2つ特定している。それぞれの都市では、中央に儀礼的な権力を示す玉座があり、そこから幅の広い大通りが周辺の村に向けて放射状に伸びている。また、それぞれの定住地は中央広場の周囲に整然と並んでおり、正確に結ばれた道でほかの定住地とつながっている。最盛期には、おそらく何千人もの住民が住み、面積はおよそ60ヘクタールあったと考えられている。

 夏至の太陽の動きに沿って造られた大通りは中央の広場で交差している。ヘッケンベルガー氏は「大きな町は、権力を示す中央玉座を中心にした基本方位に配置されており、中世ヨーロッパの都市と同様に壁が築かれていた」と話す。小さな村については、まだわかっていないことが多いという。

 現在ではほとんど樹木で覆われているが、定住地の間には農地が点在しており、キャッサバなどの作物が作られていた。また、養魚場として使われていたと考えられるダムやため池も確認されている。1250~1650年の最盛期には、地域全体の人口はおよそ5万人だったと考えられる。ヘッケンベルガー氏は「非常に計画的な構造で、地域レベルでパターンが一定している。都市社会の証しとなる地域計画や政治組織の存在を示すものだと言えるだろう。方位や距離が正確で、中世ヨーロッパの都市よりよほど計画的だ」と話す。

 ヘッケンベルガー氏は「先コロンブス期のアマゾンに見られる古代定住地ネットワークは、かのイギリスの都市計画学者エベネザー・ハワードが1902年の『明日の田園都市(Garden Cities of To-Morrow)』で構想した町のあり方に非常に近い」と話す。ハワードは、巨大都市を自然界にとって目障りなものと考え、小さな都市を緊密につなげるネットワーク構造を理想の都市としていた。「もしハワードがシングー川のことを知っていたら、本の1章を使っていただろう」とヘッケンベルガー氏は言う。かつて広がっていた“田園都市”は、アマゾンや先住民族の暮らしを破壊する現代文明に代わるものなのかもしれない。

 なお、この研究成果は8月28日発行の「Science」誌に掲載されている。

Map courtesy Science/AAAS

文=John Roach

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