今回発見された観測史上最大の質量を持つ恒星R136a1(最奥)と、その他のタイプの若い恒星を比較したイラスト。

Image courtesy M. Kornmesser, ESO
 観測史上最大の質量を持つ巨大な恒星が発見されたという研究が7月21日に発表された。質量が太陽の265倍というこのとてつもない巨大恒星は、それでも誕生時からは“減量”していると考えられ、かつては質量が太陽の320倍であった可能性が高いという。 長年の定説では、恒星は一定の質量を超えると不安定になり存在できなくなると考えられていたが、この巨大恒星の発見で恒星物理学の法則が書き換えられるかもしれない。

 イギリスにあるシェフィールド大学の天文学者で研究の共著者リチャード・パーカー氏は次のように話す。「本当に驚きだ。これまでの天文学界の常識では、恒星の質量の上限は太陽の150倍前後までとされていた。だが今回の発見により、星団や銀河での恒星の誕生と死についての定説が一新されるかもしれない」。

 パーカー氏の研究チームは、チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTが撮影した画像の中からこの巨大恒星を発見した。天の川銀河の伴銀河の1つである大マゼラン雲で、高温の若い大質量星の密集する星団の内部にその姿が確認された。

 この記録破りの恒星R136a1は、質量があまりにも巨大なため、他の恒星では確認されたことがないような高速で水素を燃焼している。この燃焼速度の速さから、誕生後100万年程度にもかかわらず既に“中年”の恒星と考えられる。これに対して太陽は、誕生してから約50億年が経過しているが、残りの寿命もまだ約50億年ある。

「ガスが集まってこれだけの巨大恒星を形成する場所は宇宙でも非常に限られているので、この巨大恒星の大きさは恒星の成長の限界といえるだろう」とパーカー氏は推測する。

 今回の発見はまた、“対不安定型超新星爆発”と呼ばれる大爆発現象の新たな証拠となるかもしれないと同氏は付け加える。

 一般に、最大級の大質量星が大爆発を起こして生命を終える際には、恒星の外側の層がまき散らされ、高密度の核が中性子星やブラックホールとして残ると考えられている。

「しかし、今回発見された巨大恒星は、そのあまりの大きさから大爆発で自分自身を完全に吹き飛ばしてしまい、残骸を一切残さないかもしれない(それが対不安定型超新星爆発の証拠となる)。この星を発見できたのは幸運だ」とパーカー氏は語る。

 この研究は、「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌2010年7月号に掲載されている。

Image courtesy M. Kornmesser, ESO

文=Andrew Fazekas