カンガルーの肉で温室効果ガスを削減!?
2008.08.22
オーストラリア政府の調査によると、オーストラリアの農業分野における温室効果ガス排出量は、約11%が牛と羊によるもので、1年間に牛1頭から1.84トン、羊1頭から140キロ以上が排出されているという。
これに対し、カンガルー1頭の排出量は3キロ未満で、ウィルソン氏の研究によれば、カンガルーに置き換えることで、年間でオーストラリア全体の排出量の3%に相当する1600万トンの温室効果ガスを削減できる見込みだという。ウィルソン氏の推計では、オーストラリアの放牧地には既にアカカンガルーなど約3000万頭のカンガルーが生息しており、たいていの農家ではカンガルーを厄介者と見なしているが、同氏はこの牧草地を現在の5~6倍のカンガルーで一杯にすることを提案している。
温室効果ガスであるメタンと亜酸化窒素を最も多く排出しているのは農業分野だ。オーストラリア政府の排出量取引制度(温室効果ガスを排出する事業者を規制する制度)で農業分野も対象となれば、カンガルーは農家にとって資産になるかもしれない。政府はこの制度を2010年までに実施する予定だが、排出量の測定が難しいという理由から農業分野は当初の5年間は対象とならない。
ウィルソン氏によると、現在のヨーロッパでの二酸化炭素の取引価格に基づくと、カンガルーの飼育によって削減される排出量は5億7000万米ドルに相当するという。まだ制度としては決定していないが、もし家畜の所有者が牛や羊を飼育し続けるために排出権を購入する必要に迫られれば、このアイデアの効果も大きくなるだろう。「カンガルーの数を2020年までに1億7500万頭まで増やせば、農家は牛の場合と同程度の利益をカンガルーから稼げるようになるだろう。しかも、規制の心配がない」とウィルソン氏は話す。
オーストラリア政府によると、カンガルーの肉の需要は高まっているという。オーストラリアのスーパーでは既に販売されており、私たちの住む近所の食料品店の棚に並ぶ日も近いかもしれない。食肉業界の推計では55カ国以上に輸出されていて、アメリカやアジア市場での成長が期待されている。
ニューサウスウェールズ大学のピーター・アンプト氏は、「鹿の肉と似たような味だ」と話す。カンガルーの肉の風味の良さや、独特のある野生的な味が魅力となっているようだ。業界団体はインターネットでレシピを無料で公開しているが、アンプト氏も直伝のレシピを教えてくれた。「バーベキューの場合はまず、オリーブ油とにんにく少々、数種類のハーブを混ぜて、そこにカンガルーの肉を漬けておく。次に、バーベキューグリルで軽く焼き色を付けてから、しばらく火を通してでき上がり。なかなかおいしいよ」。
Photograph by Jason Edwards/NGS