太古の海生爬虫類は恒温動物の可能性

2010.06.10
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イカのような動物を襲う太古のイクチオサウルスの想像図。

Image by Matte FX, National Geographic
 最新の研究によると、恐竜時代の海を支配していた巨大爬虫類は恒温動物だった可能性があるという。そのころの海の捕食動物たちは体温調節の機能を備えており、さかんに獲物を狙って深い海域まで潜り、長距離を高速で泳げたようだ。 研究チームの一員でフランスにあるクロード・ベルナール・リヨン第1大学の古生物学者クリストフ・レキュイエ(Christophe Lecuyer)氏は、「太古の海生爬虫類は、熱帯海洋でも低温水域でも、生息環境の水温に影響されずに体温を高く保てた」と話す。

 レキュイエ氏によると、体温は摂氏35~39度だった可能性があるという。これは現代のイルカやクジラと同じ高い水準だ。現生する爬虫類と魚類はほとんどが変温動物で、海水温など環境に応じて体温が変化する。

「しかし、現代の海で食物連鎖の頂点に立つマグロやメカジキなどは、ある程度体温を高く保つ機能を持っている。太古の海生爬虫類も同じだったのではないかと考えた」とレキュイエ氏は説明する。

 マグロやメカジキには恒温性が備わっており、周囲の温度が変化しても体温を比較的一定に保つことができる。また、完全ではないが内温性も備えている。つまり、体温を引き上げ安定させるのに必要な熱を、自分の体内で生み出せるのだ。哺乳類や鳥類など恒温動物のほとんどが、恒温性と内温性を兼ね備えている。

 2億5100万~6500万年前の中生代、恐竜が陸を支配する一方で、海に君臨していたのは3種の巨大海生爬虫類だった。イルカに似たイクチオサウルス類(魚竜)、ヘビのように体をくねらせるモササウルス類、ネス湖の怪獣ネッシーに似たプレシオサウルス類(首長竜)である。

 レキュイエ氏の研究チームはまず、これら爬虫類と同じ海域にいたと考えられる魚類の歯の化石を分析し、酸素同位体などの組成値を特定した。歯の酸素同位体組成は血液の酸素同位体組成を示す指標であり、動物の体温を反映する。

 研究チームは化石の歯の分析結果を、温暖地域や寒冷地域など、さまざまな環境に生息する現代の魚類の酸素同位体組成と比較した。現代の魚類はほとんどが変温動物で、周囲の海水温もわかっている。3種類のデータから古代種が生息していた海水温を導き出せた。

 その後、同じ場所から発掘された巨大海生爬虫類の歯の化石も酸素同位体組成を分析し、魚類の歯の化石のデータと比較した。爬虫類の体温が推定されると、両者の体温差も見えてくる。

 イクチオサウルスとプレシオサウルスは、体の基本構造の研究により、追跡型捕食動物であったと考えられる。動き回る必要があるため、恒温性や内温性を備えていても不思議ではないと研究チームは結論付けている。

 一方、モササウルスに関しては、獲物を待ち伏せて捕獲していたと考えられているため、はっきりとした結論は出せないとしている。それでも、巨大海生爬虫類が体温をある程度調節できたという考えに矛盾するものではないという。

 アルゼンチンにあるラ・プラタ国立大学の古生物学者スルマ・ガスパリーニ(Zulma Gasparini)氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「研究チームは、現生する脊椎動物で判明している事実を基に、昔の脊椎動物に何が起こっていたのか解明しようと取り組んでいる」。

 また、アメリカのカリフォルニア大学デービス校に所属する古脊椎動物学者、藻谷亮介氏も次のように評価している。「古代爬虫類の体温が高かったとすれば、脂肪層や特殊な血液循環など、なんらかの体温保持機構を備えていたと考えられる。どのような進化の過程で生まれたのか、今回の研究が解明に向けた真の出発点となる」。

 藻谷氏によると、海生爬虫類はすべて陸生爬虫類から分岐したもので、太古の陸生爬虫類に関しては、いわゆる「冷血動物」だったことがはっきりしているという。「泳ぎ始めてから時の経過と共に進化して、恒温性を備えるようになったようだ。いつ、なぜその進化が生じたのかを解明していく必要がある。泳ぎが上達して行動域が広がるにつれて進化したと考えられるが、平均温度や海水面の昇降がきっかけになった可能性もある」。

 今回の研究成果は、6月11日発行の「Science」誌に掲載されている。

Image by Matte FX, National Geographic

文=Charles Q. Choi

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