イスラエルの墓地から多神教の祭壇出土

2010.05.31
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イスラエルの墓地から出土した多神教徒の祭壇。レリーフの雄牛の頭部はギリシャ神話の主神ゼウスを表現したものか?

Photograph courtesy Israel Antiquities Authority
 裕福な多神教徒が礼拝に利用していた約2000年前の祭壇がイスラエルの墓地で発見された。 祭壇は花崗岩で作られ、高さ60センチ。3頭の雄牛の頭部やリボン、月桂冠のレリーフが施されている。5月17日、南部の都市アシュケロンで病院の緊急治療室建設に伴う発掘調査中に発見された。

 聖地パレスチナで一番古い港湾都市アシュケロンは、紀元前9500年頃に始まった新石器時代には人類が居住を始めていた可能性が高い。

 イスラエル考古学庁の主任考古学者イーガル・イスラエル(Yigal Israel)氏によると、ローマ帝国支配下の紀元1~2世紀に栄えたアシュケロンは当時、ギリシャ風のヘレニズム文化の強い影響下にあり、少数派のユダヤ人も暮らしていたという。

「今回、祭壇は一般の多神教徒が利用していた墓地から出土したが、過去には広場や神殿でも見つかっている。当時はどこにでもあったようだ」と同氏は解説する。

 当時はローマ帝国の全域に同じ意匠の祭壇があり、香炉で礼拝者や哀悼者が没薬(もつやく)や乳香(にゅうこう)といった樹脂を焚いていたという。

 この事実から考えて、アシュケロンで出土した祭壇もローマ帝国から持ち込まれた可能性が高いとイスラエル氏はみている。裕福な中流階級が一族の墓地に設置していたようだ。「豊かな人々は暮らしぶりや地位、財力を墓地でも誇示するが、それは現代も昔も変わらない」。

 祭壇にあしらわれた雄牛の頭部は権力の象徴であり、ギリシャ神話の主神ゼウスを表現しているとみられる。

 当時、この地の多神教徒はゼウスの息子であるアポロンやヘラクレスに加え、エジプトの女神イシスやシリア地方の女神アタルガティスも崇拝していた。

「ローマ時代の多神教徒の埋葬儀式は、現代のベドウィン(アラブの遊牧民族)やユダヤ人と似ている」とイスラエル氏は言う。

 葬列を組んだ遺族は特定の会葬者に導かれて埋葬地に赴く。そこでは、故人の遺体がろうそくの明かりや香の煙に包まれ、土に還る時を待っている。遺体は埋葬布でくるまれたり、宝飾品や香水が手向けられたりすることもあったという。

 祭壇が出土したアシュケロンの発掘現場では、石板を被せた一種の竪穴式墳墓や石灰岩の大型石棺など、一族の墓もいくつか見つかっている。

Photograph courtesy Israel Antiquities Authority

文=Mati Milstein in Ashqelon, Israel

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