メスをだまして交尾に持ち込むレイヨウ

2010.05.24
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見つめ合う2頭のトピ(資料写真)。

Photograph by Manoj Shah, Getty Images
 アフリカのサバンナに住むレイヨウの一種であるトピのオスは、発情期に入ると交尾のチャンスを増やすために危険が迫っているかのような偽の警告を発することが新しい研究によって明らかになった。 オスのトピは、メスが自分の縄張りの外に出ようとすると、まるで捕食動物が近づいているかのように鼻を鳴らしたり、目を凝らしたり、耳をそばだてたりする。 「メスが遠くに行こうとすると、オスはその前に走り出て、そのメスではなくメスの行き先を凝視しながら鼻を鳴らす動作をする。すると、たいていのメスは足を止める」と、この研究を率いたリバプール大学のヤコブ・ブローヨルゲンセン氏は話す。同氏はケニアのマサイマラ動物保護区で、このずる賢い行動を観察した。

 ブローヨルゲンセン氏によれば、オスが偽の警告を発するのはそのメスが発情期にある場合だけだという。

 メスのトピが発情期に入るのは年に1日だけで、その1日で平均4頭の異なるオスと平均11回ずつ交尾を行う。このようにトピは短い発情期に集中して交尾を行うため、オスは交尾できる確率を高めるためにこのような行動を身につけたとブローヨルゲンセン氏は考えている。

 オスにとっては、メスをだまして数分でも長く自分の周りをうろつかせれば、自分が交尾できるチャンスが増え、他のオスから交尾のチャンスを奪うことができるとブローヨルゲンセン氏は説明する。

 野生動物はさまざまな奇策を用いる。例えば一部の鳥は、ひな鳥から敵を遠ざけるために怪我を負ったふりをする。しかし、こうした奇策は通常はライバルや敵に対して行われるもので、交尾をする可能性がある相手に対して行われることはない。

 マサイマラ動物保護区のツアーガイドで、長い間トピを研究している行動生態学者でもあるマイク・レイニー氏は、ブローヨルゲンセン氏の研究について、トピがいつどのように奇策を用いるかを正確に知る手助けになると称賛している。

 レイニー氏は、インパラやトムソンガゼルなどほかのレイヨウの仲間でも同じような“偽の警告”が見られると指摘する。ただし彼らがそのような行動を取る理由はわかっていない。

 また、レイヨウの仲間は数種類の奇策を駆使することがわかっているという。たとえばレイヨウは、自分のライバルに捕食動物が忍び寄っていることがわかっていても警告を発しないことがある。また、オスのトピは怒ったふりをして子どものトピを追い回し、母親やほかのメスが自分のそばから離れないようにするという。

「実際、オスは子どもが悲鳴のような警告の鳴き声を発するまで追い回すのだが、オスは子どもを襲うふりをしているだけで本当に傷つけるつもりはない。ただ、子どもの母親やその姉妹にそばに戻ってきてほしいと思っているだけなのだ」とレイニー氏は語った。

 今回のトピの奇策に関する研究は「The American Naturalist」誌オンライン版に5月17日付けで発表されている。

Photograph by Manoj Shah, Getty Images

文=Nick Wadhams in Nairobi

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