全生物は同じ単細胞生物から進化した

2010.05.14
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写真の2種の真核生物(ヒトとヘビ)を含むすべての生物が共通の祖先から進化したことが確認されたとする研究が発表された。

Photograph by Brent Stirton, Getty Images
 地球上のすべての生物は約35億年前の単細胞生物から進化したことを確認したとする最新の研究が発表された。150年以上も前にチャールズ・ダーウィンが初めて提唱し、現在広く受け入れられている“全生物の共通祖先”説を裏付けるものとなる。 アメリカのマサチューセッツ州ウォルサムにあるブランダイス大学の生化学者ダグラス・セオバルド氏は、生物の3つの大きな分類(ドメイン)に属するすべての種が共通の祖先から進化した確率と、複数の異なる生命体から進化した確率、アダムやイブのように現在の形態のまま発生した確率などを、コンピュータモデルと統計モデルを用いて算出して比較した。ドメインとは、生物分類学における最上位の分類群(タクソン)で、真正細菌、バクテリアに似た微生物である古細菌、植物やヒトなどの多細胞生物を含むグループである真核生物の3つがある。

 セオバルド氏によると、「複数の祖先が存在したとする説で最も有力なもの」は、1つの種が真正細菌に進化し、1つの種が古細菌と真核生物に進化したという説である。しかし今回の分析結果から、その確率は10の2680乗分の1であることがわかった。10の2680乗とは10の後ろにゼロが2680個並ぶ数字である。「これは天文学的な数字で、あまりの小ささに、口にするのもはばかられるほどだ」。

 同氏はまた、ヒトは始めから現在の形でこの世に存在し、進化的な祖先など存在しないとする創造論的な考え方についても検証を行った。統計分析の結果、ヒトが独自の起源を持つなど「ひどくお粗末な仮説だ」との結論に達した。ヒトが他のどの生物とも別に創造された確率は10の6000乗分の1だという。

(創造論を支持する何人かの科学者にインタビューを依頼したが、記事の掲載までに断わられたか、または回答を得られていない)。

 3つのドメインに属するすべての種は23種類の普遍的タンパク質を共通して持つが、それらのタンパク質のDNA塩基A、C、G、Tで書かれた命令であるDNA塩基配列は、3つのドメインの間で若干異なる。

 この23種類の普遍的タンパク質は、DNAの複製や、DNAからタンパク質への翻訳などの基礎的な細胞活動を行うもので、最も小さな微生物からシロナガスクジラに至るまで、現在知られているすべての生物の生存にとって決定的に重要である。

 セオバルド氏によると、23種類のタンパク質が現在のように類似しているのは、“全生物の共通祖先”から進化したからだと一般的に考えられている。なぜなら、すべての生物のタンパク質の起源が同じであれば、現在のタンパク質に至るまでに比較的少ない数の突然変異で済むからだ。異なるタンパク質の集合を持つ複数の種から生命が進化したとすれば、はるかに多くの突然変異が必要だっただろう。

 しかし、セオバルド氏は常識を超えようとした。「私がしたかったのは、似た形質を持っていれば祖先が同じだと仮定することではなかった。それが必ずしも真実でないことを私達は知っているからだ」。

「例えば、祖先が共通であったことではなく、自然選択によって似る可能性もある」。つまり、捕食者や気候などの環境的要因によって、かぎ爪が生えたり毛皮が厚くなったりするなど、何らかの突然変異が定着することもある。

 系統の異なる生物が類似した形質へと独自に発達することを生物学では“収束進化”と呼ぶ。コウモリ、鳥、昆虫の翼はその典型的な例である。機能は似ているが互いに独立して進化したものだ。

 しかし、これらのタンパク質のグループが現在のように類似したDNA塩基配列へと独自に進化した可能性は極めて低い。「私が疑問に思ったのは、ヒトのDNAポリメラーゼ(タンパク質)の配列と、大腸菌のDNAポリメラーゼ配列を持つ別のタンパク質が同時に存在する確率はどのくらいかということだ。その結果、ヒトと大腸菌が実際に近縁であるという仮定を採用したほうが、その確率がずっと高くなることがわかった」。

 ニュージーランド、マッセー大学の進化生物学者デイビッド・ペニー氏は、広い範囲の生物を対象としたセオバルド氏の研究を「大胆だ」と評する。ペニー氏はこの研究には参加していないが、1980年代に行われたもっと狭い範囲の生物を対象とした同様の研究に参加したことがある。同氏の研究チームは哺乳動物が共通して持つタンパク質に着目し、異なる種の哺乳類が共通の祖先から進化した可能性が高いと結論づけた。

 同氏はこう主張する。“全生物の共通祖先”説を検証することは重要である。なぜなら、他の分野で行われているように、生物学もその中心的な教義に疑問を持つべきだからだ。「進化論も特別扱いを受けるべきではない」。

 この研究は2010年5月13日発行の「Nature」誌に掲載されている。

Photograph by Brent Stirton, Getty Images

文=Ker Than

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