小惑星で水と炭素の存在を初めて確認

2010.04.29
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小惑星テミスと、それよりも小さい同種の小惑星(想像図)。

Illustration courtesy Gabriel Perez, Instituto de Astrofisica de Canarias
 火星と木星の間の軌道を周回する小惑星に水が存在することが、新しい研究によって初めて明らかになった。小惑星24番テミスを2つの研究チームが個別に分析した結果、地表が霜で覆われていることが確認された。さらに、この霜には炭素を含む物質が混ざっているとみられるという。 一方の研究チームを率いたセントラルフロリダ大学のウンベルト・カンピンス氏は、「小惑星で水氷と有機分子を初めて発見した。どちらも同じ小惑星にあったのだ」と話す。

 どちらの研究チームも、ハワイにあるNASAの赤外線望遠鏡施設(IRTF)を使用し、様々な波長で小惑星から反射する太陽光を観測して、水の存在を示す形跡を発見した。

 NASAでは、テミスに似た小惑星をさらに詳しく調査する計画が検討されており、これが実現すれば、われわれが普段飲んでいる水や生命の構成要素である物質が隕石の衝突によって地球に運ばれてきたとする仮説の検証に役立つだろう。

 小惑星は惑星が形成された後の残骸で、その組成は46億年前からほとんど変わっていないと考えられている。

 テミスは太陽からおよそ4億8000万キロの軌道を回っており、火星と木星の間にある主小惑星帯で最大の小惑星の1つだ。

 小惑星は、海王星の軌道の外側からやって来る彗星よりもはるかに太陽に近い軌道を周回するため、比較的乾燥していると考えられている。しかし、これまでの学説では、主小惑星帯の小惑星でも地下であれば氷が存在しうるとされてきた。実際に主小惑星帯には、固体が直接気体に変化する「昇華」によって水氷から発生したと思われる“ちり”の尾を持つことで知られるメインベルト彗星と呼ばれる珍しいグループがあり、テミスと同種の2つの小惑星がこのグループに属している。

 クイーンズ大学ベルファストの天体物理学者ヘンリー・シェ氏はこの研究の解説記事で、「小惑星の氷はとうの昔になくなっているはずだというのが定説だったが、テミスで氷が発見されたことで、小惑星の氷が初期の太陽系を知るための “生きたサンプル”になる」と書く。

 テミスの氷ができたプロセスについて、研究の著者カンピンス氏は次のように推測する。太陽光によってテミスが暖められて地下の氷が昇華し、その水蒸気が地表に放出された後、太陽光が届かない影に入って気温が下がると水蒸気が地表で再び凝結して氷になったのではないか。または、流星塵(りゅうせいじん)が地表に衝突して地殻を攪拌する“インパクトガーデニング”によって、地下の氷の層が徐々に露出したのかもしれない。あるいは、まったく別の原因の可能性もある。「情報があまりに少ないときの楽しみの1つは、いろいろな仮説が立てられることだ」。

 小惑星の組成については、さらに詳しいデータが早ければ6月にも得られる可能性がある。日本の小惑星探査機「はやぶさ」が、小惑星から直接採取したサンプルを初めて地球に持ち帰るとみられているためだ。

「はやぶさ」は2005年に小惑星イトカワに着陸した。当初に予定していたサンプルの採取には失敗したものの、イトカワの地表のちりが試料容器に偶然入っている可能性があると考えられている。

 一方NASAは、RQ36という小惑星からサンプルを採取して地球に持ち帰る「オシリス・レックス(OSIRIS-Rex、Origins Spectral Interpretation Resource Identification Security-Regolith Explorer)」と呼ばれるミッションを提案している。

「偶然にも、オシリス・レックス計画の主要な目的地はテミスと同じカテゴリーに分類される小惑星だ」とカンピンス氏は説明する。つまり、RQ36のサンプルにテミスで発見されたのと同様の水が含まれている可能性がある。

 初期の地球は非常に高温だったため、地球に元から存在した水を保持することはできなかったという説がある。そのため、地球の海の水は冷えた地球に小惑星や彗星が次々と衝突することによって運ばれてきたのではないかという見方もある。

 テミスの水と地球の水の化学的性質を照合すれば、この謎を解く手がかりになるかもしれない。さらに、オシリス・レックス計画で得られたサンプルに有機物が含まれていれば、隕石が生命の出発物質をもたらしたとする学説の信憑性が増すことになる。

「このRQ36も組成がテミスに似ていることは十分にありうる。したがって、地球近傍小惑星に乗って地球にやって来た、生命の素となる物質かもしれない原始的な有機分子を採取できる可能性がある」とカンピンス氏は期待する。

 この研究は2010年4月29日発行の「Nature」誌に掲載されている。

Illustration courtesy Gabriel Perez, Instituto de Astrofisica de Canarias

文=Brian Handwerk

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