マックノート彗星は観測史上最大?

2010.04.14
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太平洋上空のマックノート彗星(2007年撮影)。

Photograph courtesy S. Deiries
 “2007年の大彗星”とも呼ばれるマックノート彗星の通り跡の大きさを計測した新たな研究が発表され、この彗星がこれまで考えられていたよりはるかに大きな航跡を太陽系に残したことがわかった。 2007年1月、空に尾を引くマックノート彗星が世界中で観測された。この彗星は1965年以降に観測された中で最も明るい彗星で、場所によっては日中でも肉眼で見ることができた。肉眼で観測可能な尾の長さが35度に及び、これは夜空に満月を70個並べたのとほぼ同じ見かけの長さである。

 2007年2月には、偶然にも欧州宇宙機関(ESA)の太陽・宇宙探査機ユリシーズがこの彗星の尾の中を通過した。この探査機は太陽大気の観測を目的としており、太陽から絶え間なく放出される荷電粒子である太陽風が彗星の通過によってどのような影響を受けたかに関するデータの記録に成功した。

 彗星が太陽に接近すると、熱で彗星の氷が溶け、ちりが放出されることで光輝く尾が形作られる。しかし彗星には、荷電ガスでできた肉眼で見えない尾であるプラズマテイルも存在し、これが太陽風と相互作用する。彗星のプラズマテイルは、船が水面に残す航跡に似た“頭部波”を太陽風の中で彗星の両側に起こす。

 探査機ユリシーズの観測から、マックノート彗星のプラズマテイルが発生させる頭部波の内部では太陽風の速度が半減したことがわかった。その時の太陽からこの彗星までの距離であれば、通常なら太陽風は秒速約700キロで移動する。しかし尾の内部では秒速400キロに満たなかった。

 ユリシーズは、マックノート彗星の尾の“衝撃”を受けた太陽風の領域を通過するのに18日間という記録的な時間がかかった。これに対し、1996年に百武彗星の通り跡を通過した時は2日半しかかかっていない。同じく欧州宇宙機関の探査機ジオットは、わずか数時間でハレー彗星の尾を通過した。この研究を発表したイギリスにあるユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのジェライント・ジョーンズ氏は、「マックノート彗星が太陽風にとって大きな障害物となったことがわかる」と話す。

 またユリシーズのデータによると、マックノート彗星の放出した荷電ガスの量はハレー彗星の3倍以上だったという。

 物理的な大きさで言えば、マックノート彗星の核は直径25キロを下回ると考えられている。プラズマテイル全体の正確な長さは最新のデータでもわからないが、ユリシーズは核から2億2400万キロの位置で尾を通過したとジョーンズ氏の研究チームは指摘する。

 ジョーンズ氏は、尾の“衝撃”を受けた周辺領域の幅が彗星の規模の尺度として適していると考えている。彗星が周囲にどの程度の影響を与えたかの目安となるからだ。この基準を用いて最新のデータを分析すると、マックノート彗星は観測史上最大の彗星となる。

 ただし、現在までに宇宙探査機が測定した彗星はごくわずかであり、この記録が将来塗り替えられる可能性は高い。「恐らくマックノート彗星より大きな彗星はあるだろうが、それでもマックノート彗星が巨大な彗星の1つであることは間違いない」とジョーンズ氏は語る。

 この研究はスコットランドのグラスゴーで開催中の2010年王立天文協会天文学会で2010年4月13日に発表された。

Photograph courtesy S. Deiries

文=Kate Ravilious

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