古代の哺乳類絶滅は流星群が原因?

2010.04.08
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ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた分裂する彗星(2006年4月18日撮影)。

Image courtesy NASA, ESA, H. Weaver (APL/JHU), M. Mutchler, and Z. Levay (STScI)
 1万3000年前に北アメリカで起こった大型哺乳動物の絶滅は、毎年恒例のおうし座流星群の母天体が引き起こしたのかもしれない。ただし、この研究結果は賛否両論を呼んでいる。 地質学的な記録によると、地球が最後の氷河期から脱したちょうどその時、気温が摂氏8度も降下した。北アメリカでサーベルタイガーやマンモスなどの大型動物が絶滅したのは、おそらく突然の寒さに見舞われたためだ。 しかし、このような激変のきっかけは解明されていなかった。

 宇宙生物学者のビル・ネイピア氏とビクター・クリューブ氏は15年以上前から、直径50~100キロの彗星が犯人だと主張している。この彗星は2~3万年前、火星の軌道のすぐ外にある小惑星帯から太陽までの領域、内太陽系に入り込んだという。

 イギリスのカーディフ大学に所属するネイピア氏は今回の研究結果の中で、巨大な彗星が太陽を高速で周回する新たな軌道に入って分裂し始め、約1万3000年前、その破片が地球を襲ったと唱えている。

 ネイピア氏が示したモデルによれば、この彗星の破片は現在も複合体の形で観測できるという。おうし座流星群は、その複合体が毎年10月後半から11月前半にかけて地球に接近し、小さな隕石として大気圏に飛び込んでくるために起こる。

 彗星が衝突したというネイピア氏の説には異論も多い。しかし同氏によると、今回の研究結果はこの説をさらに強化するものだという。

「事実に基づく筋の通った天体物理学的なメカニズムだと考えている」とネイピア氏は断言する。同氏の論文は現在Webサイト「arXiv.org」で公開されており、「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌にも掲載される。

 ネイピア氏がおうし座流星群と哺乳動物の絶滅を結び付けたきっかけは、北アメリカの氷河期の地層で発見された微小なダイヤモンド超微粒子の痕跡だった。顕微鏡でなければ確認できないほど小さなダイヤモンドは、地球外から何かが衝突した場合に形成されると考えられている。

「ダイヤモンド超微粒子の痕跡をこの目で見てピンと来たんだ」とネイピア氏は振り返る。

 また、同時期の北アメリカの地層で山火事の跡がいくつも見つかっており、降り注いだ燃え盛る彗星の破片が原因と説明がつく。 それでも、多くの天文学者はネイピア氏の説に否定的だ。これほどの惨事を引き起こすほど大きな隕石が太陽の近くを周回した例が知られていないためだ。

 アメリカ、インディアナ州のパデュー大学で隕石の衝突について研究するジェイ・メロシュ氏は、「ほとんどあり得ないことだ」と話す。同氏は今回の研究結果にも納得していない。

 さらに、現存する流星群が古代の絶滅の原因だったとしたら、内太陽系には今でも脅威が存在するはずだ。アメリカ、コロラド州にある宇宙科学研究所の上級研究員で、隕石の衝突が及ぼす危険について調べているアラン・ハリス氏はこう主張する。

「彗星(または小惑星)から流星が降り注ぐのは、ストーブの火は台所にほんの数秒で煙を充満させる一方、煙が消えるまでに何十分も何時間もかかるのと似ている」と、ハリス氏は電子メールで説明している。

 同氏によると、こうした彗星の塊を調査した結果、「(崩壊の途中にある巨大な彗星を構成するのに)必要な数は存在しない」ことが示されているという。「しかも、この2万~3万年の間に分裂し、軌道を一団になって移動しているようにはとても見えない」。

 ハリス氏に言わせれば、おうし座流星群複合体と北アメリカでの絶滅を結び付ける今回の主張は、「いまだ証明されていない大ざっぱな仮説のうわべを飾っただけにすぎない」という。

Image courtesy NASA, ESA, H. Weaver (APL/JHU), M. Mutchler, and Z. Levay (STScI)

文=John Roach

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