初の水陸両生の昆虫、ハワイで発見

2010.03.24
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
水中で繭(まゆ)のような入れ物から顔をのぞかせる水陸両生のガの幼虫。ハワイで新たに発見された。

Photograph by Patrick Schmitz
 陸上でも水中でも同じように生活できる新種のガの幼虫が複数発見された。真に水陸両生の昆虫と呼ぶことができる初めての例だという。 ハワイの淡水の急流にしか見られないこの水陸両生の昆虫は、400を超える種からなるハワイカザリバガ、学名ハイポスモコマ(Hyposmocoma)属に分類されるガの幼虫である。

 新たに発見されたガの幼虫は14種で、いずれも水から離れた場所には生息していない。しかし完全な水生の幼虫とは違い、水中でも陸上でも、何時間でも同じように活動できる。

 研究の共著者であるハワイ大学のダニエル・ルビノフ氏は次のように話す。「水中に放つと泳ぎ回って餌を食べるし、水から取り出しても何の問題もなく動き回る。こんな昆虫はほかに確認されていないし、昆虫以外にもいない」。

 カブトムシの中には水中で生き延びるために短時間の休眠状態に入る種があり、またハイギョなどの水生生物は粘液で内側を覆った繭(まゆ)を作って陸上でも一時的に生きることができる。しかしルビノフ氏によれば、このような生物は自分に合った環境以外で「普段通りに活動している」とは言い難い。

 ハイポスモコマ属のほかの種と同様、今回発見された幼虫も吐糸を固めて作った繭のような入れ物の中で生活し、時折頭を突き出して餌を食べたり方向を確認したりする。

 ルビノフ氏の研究チームは当初、繭が酸素ボンベのように空気を蓄え、幼虫がそれを呼吸していると考えた。しかし、「水中で繭を切開しても気泡は出てこなかった」。

 幼虫が水中でどのようにして呼吸するのかは解明されていない。「まだ見つかっていない特殊な器官で呼吸している可能性もあるし、陸生の幼虫より皮膚が薄く、皮膚呼吸ができるのかもしれない」とルビノフ氏は推測する。

 皮膚が薄いことが原因であるとする説が正しければ、酸素を多く含む流れの速い川にしか生息しない理由も説明できる。「水槽で飼うのならエアポンプを設置しなければならないだろう。エアポンプを取り外すと幼虫は水の中で異臭を放って腐敗することになる」。

 成虫へと羽化する頃になると、幼虫は繭の中に閉じこもって水面付近を浮遊する。成虫として繭から出てくる時には、すぐに水面から空中へと飛び立つことができる。「確認されている限り、成虫は泳げないようだ」とルビノフ氏は言う。

 水陸両生の幼虫は環境に柔軟に適応できるにもかかわらず、人間の営みによって既に危機的状況に追い込まれていると研究チームは指摘する。

 例えばハワイの河川の多くは、サトウキビ畑の灌漑(かんがい)などのためにルートを変えられ、コンクリートの護岸工事が施されることが増えている。このような事態が進めばこの昆虫は死に絶えてしまう。「世界中でここにしかない素晴らしいものを幼虫たちが見せてくれているというのに、この現状は悲劇的だ。何らかの形で保護すべきだが、今のところ無視されている」とルビノフ氏は嘆く。

 この研究は「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版で2010年3月22日に公開された。

Photograph by Patrick Schmitz

文=Ker Than

  • このエントリーをはてなブックマークに追加