ヨウジウオ、魅力のないメスの子を流産

2010.03.18
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“妊娠”しているキシマイシヨウジ(ヨウジウオの仲間)。フィリピン沖で撮影。

Photograph by Tim Laman
 ヨウジウオのオスは交配するメスの選り好みが激しく、常に体の大きなメスが現われるのを待っていることが新たな研究でわかった。“妊娠中”のヨウジウオのオスは好ましくないメスが産み付けた胚を死滅させ、より魅力的なメスと子孫を残す時のために育児嚢(いくじのう)を空けて待つという。 これまでも、体の小さな魅力のないメスと交配したヨウジウオのオスが、そのメスの産んだ卵の一部、時には全部を意図的に放棄し、その胚から栄養を吸い取ることが知られていた。

 従来は、栄養不良のオスが発育中の胚の栄養を取り込むためにそうすると考えられていた。ところが今回のガルフパイプフィッシュの研究で、妊娠中のオスが胚を放棄するのは、より魅力的なメスの出現を待つためだということが示された。

 研究の共著者で、アメリカにあるテキサスA&M大学の進化生物学者キンバリー・パックゾルト氏は、「オスは自分のエネルギーを何に注ぐべきかよく知っているのだ」と話す。

 近縁種であるタツノオトシゴと同様に、ヨウジウオはオスが“妊娠”するという特異な習性を持つ。交配時にメスがオスの育児嚢に卵を産み付け、オスがそれを育てる。

 パックゾルト氏の研究チームは、体の大きさが異なる複数のメスをオスと交配させ、オスが“中絶”した胚の数を観察した。その結果、オスは圧倒的な割合で体の大きなメスが産んだ胚を保持して育てた。

 オスがなぜ体の大きなメスに惹かれるのかはわかっていない。大きなメスが産む卵は大きくて質が高いという、ほかの魚種に見られる一般的な傾向に当てはまるのかもしれない。

 その理由が何であるにせよ、「ヨウジウオの育児事情は思ったより複雑なものだということが明らかになりつつある」とパックゾルト氏は言う。

 この研究は2010年3月18日発行の「Nature」誌に掲載されている。

Photograph by Tim Laman

文=Helen Scales

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