ホビットは100万年前からいた?

2010.03.18
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インドネシアのフローレス島で発見された、“ホビット”と呼ばれる原人が使用していたと見られる石器(資料写真)。

Photograph by Kenneth Garrett
 インドネシアのフローレス島で新たに発見された石器から、“ホビット”の進化の歴史は従来の説より20万年も長い100万年だったとする最新の研究が発表された。 ホビットの謎が注目されるきっかけとなったのは、2004年にフローレス島で発見されたメスの原人の骨で、身長1メートル、体重25キロ、グレープフルーツほどの大きさの脳を持っていた。

 架空のこびと族“ホビット”に似たこの小さな生物は、現生の人類と同種か新種かの論争が続く中で、ヒト属の新種としてホモ・フローレシエンシスと命名された。この原人は現生の人類が世界中に広がり始めていた約1万8000年前までこの孤島に生存していたという。

 オーストラリアのウーロンゴン大学の考古学者で研究を共同で率いたアダム・ブルム氏は電子メールでの取材に対し、100万年前の火山性堆積物から今回新しく発見された石器は「先端の鋭い素朴な剥片石器」だと説明する。同じフローレス島の近隣の遺跡からも同様の石器が見つかっており、その遺跡は今回の遺跡より新しい時代に属するが、やはりホビットとその祖先に関連したものだという。

 今回の発見は、アフリカを起源とする古代人の石器文化が、考えられていたよりはるかに長期間にわたってこの島に存在していたことを示している。

 ロンドン自然史博物館の古生物学者で今回の研究には参加していないクリス・ストリンガー氏は、アフリカを出た初期の人類が今から100万年前までに、これまで考えられていた以上に広い地域に散らばっていたことを示す「胸躍る」発見だと話す。

 発見された石器と骨から、ホビットの祖先はおそらく小さな脳を持ち直立歩行したホモ・エレクトスで、約150万年前にアフリカを出て、88万年前までにはフローレス島にたどり着いたと考えられる。

 彼らは到着後ごく短期間でコビトゾウの仲間やゾウガメの仲間を狩って絶滅させたと考えられていた。しかし、新たに発見された石器の年代から、コビトゾウとゾウガメはホビットの祖先がフローレス島に移住してから10万年後に絶滅したことがわかり、ホビットの祖先が与えた影響は「ごくわずかだったに違いない」とブルム氏は推測する。

 さらに、このホビットの祖先はホモ・エレクトスより原始的な生物である可能性がある。「もっとも、まだ作業仮説に過ぎないが」とブルム氏は付け加える。

 ホビットの骨を最初に発見した研究チームは、発見を2004年に報告した際に、この骨がホモ・エレクトスの子孫である新種のホモ・フローレシエンシスだとした。その後、ホビットの手首、脚、頭蓋骨、顎、脳、肩の特徴の研究が進み、ホモ・エレクトスよりも原始的な生物の子孫であることが指摘されている。ロンドン自然史博物館のストリンガー氏は、「解剖学的にはその可能性がますます高くなっている」と話す。

 しかし、今回の研究で新しく主張されている年代について、誰もが賛同しているわけではない。イリノイ大学シカゴ校名誉教授の人類学者ジェームズ・フィリップス氏は電子メールでの取材に対し、「人類の祖先であるヒト族(ホミニン)が120万年前にフローレス島にいたという話には何の異存もない。何といっても、彼らは75万年前までにはジャワ島にいたのだから」と答える。

 しかし、100万年前の火山性堆積物から道具が見つかったからといって、それが100万年前のものだという保証はないと同氏は異論を唱える。「人工物が堆積物の中で移動する原因は、地下水流など数多くある」。

 同氏はまた、フローレス島の石器作りの技術が100万年以上もほとんど変化していないと今回の研究で仮定されていることに戸惑いを見せる。「地球上の他のどの場所でも、変化はゆっくりはであるが常に起こっていた。そう、常にだ」。

 ホビット研究での論争は今に始まったことではなく、ホモ・フローレシエンシスが現生の人類と別の種かどうかに関しては、いまだに意見が分かれている。例えば、ホビットは矮化などの障害を引き起こす遺伝子疾患を持った現生人類だったとの説もある。

 彼らが何者でいつ頃やって来たとしても、そもそも原始的な人類である彼らがどうやってフローレス島にたどり着いたのかという疑問がある。

 ロンドン自然史博物館のストリンガー氏は、おそらく徒歩でアフリカからインドネシアのスラウェシ島に移住してきたとする説に賛同する。そこで彼らは津波で海に流されたのかもしれない。スラウェシ島沖の海流はフローレス島に向かって南に流れている。「流木に乗って移動した可能性が最も高い」。

 この説を裏付けるために、最初のホビット発見に貢献した研究チームは、ホビットの祖先がフローレス島に住むはるか前にスラウェシ島に原始人類が住んでいた証拠を見つけようとスラウェシ島で調査を続けている。

 この研究は「Nature」誌オンライン版に2010年3月17日に公開された。

Photograph by Kenneth Garrett

文=John Roach

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