角砂糖(写真右)など特定の固形物を透過する光の散乱の仕方を表す数式を解くことによって、ガラス(写真左)を透かして見るように不透明な固形物を透かして見ることができるという。

Image courtesy American Physical Society
 不透明な薄い膜を通り抜けるわずかな光を解析し、膜の向こう側を透かして見ることに成功したとする研究が発表された。 ペンキの乾いた塗装面、卵の殻、紙、皮膚といった薄い物質を通して物が見えないのは、光がその物質を何とか通り抜けても、無秩序に思えるほど複雑に散乱してしまうからだ。

 しかし、不透明な物質の向こう側から光を当て、そこに隠れている物体の姿を明らかにすることは実際に可能だとする論文を、パリ市立工業物理化学高等専門大学(ESPCI)の科学者が発表した。

 その鍵は、物質を通過した光がその物質によってどう変化するのかを正確に知ることにある。

 実験では、白色ペンキの原料としてよく使われる酸化亜鉛を厚さおよそ80マイクロメートル(0.08ミリメートル)の膜状にし、そこに緑色のレーザーを照射した。この酸化亜鉛の膜の向こう側の見えない場所には小さな点の集まりが描かれていた。

 そして、酸化亜鉛の膜を突き抜けた光のパターンを分析し、透過行列と呼ばれる複雑な数理モデルを作成した。このモデルは、不透明な物質を通り抜けてきた一見無秩序な光の軌跡を読み解く数式である。

 この数式を解くことで酸化亜鉛の膜を通り抜けた緑色のレーザー光を“変換”することに成功し、緑色の点が集まった画像をデジタルカメラで撮影できたという。つまり、“壁”の向こう側を“見る”ことができたのだ。

 ESPCIの物理学者で研究の共著者であるシルバン・ギガン氏はナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対し、研究チームは現在これよりはるかに複雑な身近な物体の画像の作成に取り組んでいるが、まだ具体例を示せる段階にないと答えている。

 ただし、この透視法も完璧ではない。不透明な物質の反対側まで突き抜ける光は多くないからだ。将来もっと複雑な実験を行った場合、この“情報”の欠落のために画像が粗くなるかもしれないと同氏は説明する。

 一方、オランダのアムステルダムにあるトゥベンテ大学の物理学者で今回の研究には参加していないアラルド・モスク氏によると、この技術が厚い壁の透視に役立つことはないだろうという。「厚さ100ミリの壁の透視は100マイクロメートルの塗装面の透視より100万倍難しいだろう」。

 しかし、この手法を用いれば体内を覗き込めるようになる日が来るだろうとギガン氏は期待する。ただし、生きている細胞の運動によって起こる光の分散の影響をすべて打ち消すには、システムの速度を今の数千倍にする必要がある。

 それでも、厚さ数ミリの皮膚を透かして見ることは可能になるかもしれないとトゥベンテ大学のモスク氏は賛同する。「まだまだ先は長いが、非現実的な期待ではないと思う」。

 この研究は2010年3月8日発行の「Physical Review Letters」誌で発表された。

Image courtesy American Physical Society

文=Charles Choi