アポロの月の岩から水を検出

2010.03.10
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月の岩に水の痕跡があるという最新の研究が発表された。写真は月から採取された岩のサンプル(撮影日不明)。

Photograph by Tyrone Turner, National Geographic Stock
 2009年10月、NASAはロケットを月に衝突させ、月面の光の波長パターンを探査機によって分析した。これらはすべて、岩だらけの月面に水が存在することを確認するための調査だった。だが、月に水が存在したという動かぬ証拠はすでに私たちの目と鼻の先にあった。アポロ宇宙飛行士が地球に持ち帰った有名な月の岩に微量の水が含まれていることが2010年3月2日に発表された。 アポロが月から持ち帰った岩と火山ガラスから検出された水の量は多くてもわずか数千ppmで、1960年代後半から1970年代初めに行われた分析では月には水がないとの結論に至ったのもうなずける。

 テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターで月の試料を管理するゲーリー・ロフグレン氏は、「これほど微量な水でも解析できるくらい計測機器の精度が上がったのはここ10年ほどだ」と話す。同氏はこの研究には参加していないが、さらに研究を深めるに値する「堅実な研究」だと評価する。

 月から採取したサンプルに水が存在している可能性を初めて指摘したのは、2008年に「Nature」誌に掲載された論文だった。この論文では、アポロが持ち帰った月の火山ガラスから水の分子が検出されたとしている。しかし、サンプルの管理が不十分だったことなどによって地球上で水の分子が混入した疑いを払拭できなかった。

 採取された水がどこから来たのかを判断する方法の1つに、水に含まれる様々な水素同位体の量を測定するという方法がある。ただし、コネティカット州ミドルタウンにあるウェスリアン大学の地球環境科学者ジェームズ・グリーンウッド氏によると、「Nature」誌の研究の時点ではこの手法はまだ開発されていなかった。

 同位体の測定は指紋の採取と同じようなものだ。例えば、地球のマントルに由来する水は彗星から来た水と同位体比が異なる。

「Nature」誌にこの研究が発表されたとき、グリーンウッド氏は火星の隕石の化学構造を分析する手法の開発を他に先駆けて進めていた。同氏は後に、さまざまな種類の月の岩から採取した鉱物アパタイトのサンプルにこの手法を応用し、そこに含まれる水の分子の“指紋”を特定した。

 その結果、月の岩の水は「地球のものとは違う」ことが証明されたという。同氏はこの結果を、テキサス州ヒューストンで開催された第41回月惑星科学会議(Lunar and Planetary Science Conference)で2010年3月2日に発表した。

 この会議でグリーンウッド氏らの次に発表を行った研究チームは、月の“海”の1つで採取した、アパタイトを含有する岩から水が見つかったことを明らかにした。月の“海”とは、大昔に火山の噴火で溶岩が流れ込んでできたと考えられている暗い色の地域である。

 電子マイクロプローブから鉱物に粒子ビームを照射するなどの方法により、この研究チームは月のサンプルに含まれるフッ素と塩素の気体の量を算出することができた。

 検出されたフッ素と塩素の気体の量をアパタイトの化学式に当てはめると、鉱物の結晶構造が完成するにはもう1つ別の構成要素が必要だとわかった。研究チームは、その分子は水酸化物だと結論づけた。水酸化物はアパタイトの一般的な成分であり、水が分解された時にできる副産物である。

 ワシントンD.C.にあるカーネギー研究所の地学者で研究に参加したフランシス・マッカビン氏によると、この発見は月のマグマ性鉱物から水が発見された初めてのケースの1つで、月のマグマに微量の水が一般的に含まれるという証拠が1つ増えたことになるという。

 しかし、水の発見が続いたとしても、期待よりもはるかに少ない量しか見つからないだろうと同氏は指摘する。「月にはこれまで考えられていたよりもはるかに多くの水があるといっても、地球や火星に比べれば桁違いに少ないため、過去40年間における月のサンプルの分析結果とまったく矛盾しない」。

 今後は、どこから月に水がやって来たのかについて研究が進められる予定だ。最も一般的な説は、火星ほどの大きさの物体が地球と衝突して月が生まれた直後の時期に注目するものである。

 ウェスリアン大学のグリーンウッド氏によると、誕生直後でまだ液体だった月が凝固する過程で、氷でできた彗星が衝突した可能性が考えられるという。

 カーネギー研究所のマッカビン氏は別の可能性として、地球の破片が宇宙空間に投げ飛ばされて月を形成した際に水が消失しきっていなかったとの説を挙げる。つまり、月の水は原始の地球から来たかもしれないという。

 今回月の岩から検出された微量の水は、誕生時の燃えさかる月で水が蒸発しきったと仮定しても検出され得る程度の量だとマッカビン氏は指摘する。「いくら月が灼熱の世界だったとしても、月から水が完全に消えることはあり得ない」。

Photograph by Tyrone Turner, National Geographic Stock

文=John Roach

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