ヘビが恐竜を襲う瞬間の化石を発見

2010.03.01
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先史時代のヘビが、卵から孵化したばかりの恐竜というごちそうを前に、まさに食事にとりかかろうとしている。インドで発見された6700万年前の化石をもとに復元した実物大模型。

 ところがヘビの食事が始まる直前、豪雨のため水路からあふれた水に押し流された泥が恐竜の巣を覆い、ヘビと恐竜を死に追いやって一緒に埋葬してしまった。

 今回発見された化石に関する研究の共著者であるジェフリー・ウィルソン氏によれば、このヘビの食事が中断されたことが幸いして、太古のヘビの採食行動や生まれたばかりの恐竜が直面していた危険を垣間見ることができるようになったという。しかも「恐竜以外の生物が恐竜を食べている様子を示す数少ない例だ」。

Image courtesy Ximena Erickson and Bonnie Miljour; sculpture by Tyler Keillor
 ヘビが竜脚類の恐竜を襲う瞬間の化石が発見された。太古のヘビが恐竜を食べていたことを示す初めての確実な証拠だという。 インドで見つかったこの化石は恐竜の巣の様子をそのまま残しており、ほぼ完全な姿のヘビ1匹、産まれたばかりの恐竜の子ども1頭、まだ孵化していない卵2個の化石が含まれている。これらが胸躍る物語の“登場人物”である。

 6700万年前のある嵐の日、体長3.5メートルのヘビがこの無防備な恐竜の巣に侵入したらしい。体長およそ50センチの恐竜の子どもが卵の殻から出ようともがいているのを見つけたようだ。

 今回発表された研究によると、ヘビは孵化しようとする恐竜の子どもの傍らにうずくまり、今にも襲いかかろうとしていた。その時、激しい雨で近くの川から土砂が流れ出し、ヘビも恐竜も泥に飲み込まれて窒息死した。

 この研究に参加したミシガン大学の古生物学者ジェフリー・ウィルソン氏によると、食事を邪魔されたこのヘビの化石は、大昔のヘビがどのような摂食行動をとっていたのか、そして産まれたばかりの恐竜がどのような危険に晒されていたのかを垣間見ることができる貴重な化石だという。「恐竜以外の生物が恐竜を食べていたことを示す、確認された中でも非常に数少ない例の1つだ」。今回の研究の一部は、ナショナル ジオグラフィック協会の研究・探検委員会(CRE)の援助を受けている。

 ほかの恐竜の卵を盗んで食べる恐竜がいたことはかなり以前から知られており、最近発見された化石からは、哺乳類も恐竜の子どもを食べていたことが示されている。

 ヘビも恐竜を食べていたのではないかと考えられていたが、これまで証拠が見つかっていなかった。「小さくておいしそうな恐竜だったら、つらい人生を送っていただろうね」とウィルソン氏は話す。

 ボア科に属するヘビやアナコンダなど大きな口を持つ現生種のヘビは、あごの関節が頭骨よりもかなり後ろ側にあり、非常に大きく口を開くことができるため、大型の獲物も食べることができる。

 しかし今回発見された太古の新種ヘビの口は、それほど大きく開くことはできない。あごの関節が頭骨の最後部よりも前にあるためだ。ラテン語で“古風な口の開け方をするインドのヘビ”という意味のサネイェ・インディクス(Sanejeh indicus)という名前は、この大きく開かない口に由来している。

「しかしサネイェは巨大なあごはなくても身体そのものが大きかったので、恐竜の幼獣など大きな物を飲み込むことができた。もしこのヘビが進化して今のヘビのような大型のあごを持つようになっていれば、もっと大きな物も食べていただろう」とウィルソン氏は語る。

 また、サネイェは環境に適応するために、現在のヘビにもみられる重要な特徴を身につけていた。上あごが下あごから独立して動くのだ。このあごの構造のおかげでヘビは身体を左右にくねらせながら、ヘビから逃れようと暴れる獲物を徐々に飲み込んでいくことができる。これは、きついジーンズに脚を通すときに誰もがやる動作だ。

 さらにサネイェは、卵を締め付けて殻を割り、中の幼獣を取り出すこともできたようだ。もっとも、化石で発見された恐竜の幼獣の場合は、サネイェが来る前にすでに孵化していた可能性が高いという。現在のヘビと同様にサネイェも静止している物体には攻撃を加えない習性があったと考えられるためだ。

 サネイェの犠牲となったとみられる幼獣は幼いため、どの種類の恐竜かは断定できなかったが、首の長い草食の大型恐竜である竜脚類であることは確かだという。では、どの竜脚類だろうか。

 過去に発見された化石から、この地域ではティタノサウルスが広く生息していたことがわかっており、幼獣もティタノサウルスの可能性が高いと今回の研究では述べている。

 サネイェとその獲物の化石は、1984年にインドのグジャラート州で発見された。その後、誤って竜脚類の幼獣の化石のみが含まれると考えられ、数個に分割されてしまった。そして2004年につなぎ合わされ、調査のためミシガン大学へ送られた。

 今回の研究によると竜脚類の恐竜は、ヘビなどの捕食者に食べられるのを防ぐため、その多くが孵化してから早い時期に身体が急速に成長したという。「この幼獣も1歳になる頃にはサネイェが食べることができる大きさを超えていただろう」とウィルソン氏は語る。

「この発見は非常に興味深い。サネイェが恐竜の幼獣を食べていたという結論も合理的だ」と語るのは、ルイジアナ大学ラファイエット校の爬虫両生類学者ブラッド・ムーン氏だ。同氏は今回の研究には参加していない。

 しかし、サネイェが恐竜の巣に近づいた理由はほかにあったとムーン氏は考えている。例えば雨風を凌ごうとしていた、あるいは何かほかの動物を追いかけていた可能性が考えられるという。

 しかも、ワシントンD.C.にあるスミソニアン研究所国立自然史博物館で両生類および爬虫類を研究する名誉学芸員であるゲオルグ・ツーク氏によると、見応えのある光景であることは確かだが、獲物を襲っている瞬間のヘビの化石が発見されたことはそれほど驚くべきことではないという。

 同氏は今回発見された化石が、ヘビが恐竜を食べていたことを示す初めての証拠であることを認めながらも、現生のヘビの習性に詳しい人にとっては驚くに値しないことだと語る。ヘビは哺乳類や鳥類だけでなく爬虫類も食べるからだ。時にはほかのヘビも食べるという。ツーク氏は今回の研究には参加していない。

「つまり、小さな恐竜を食べていた可能性も十分に考えられるということだ」。

Image courtesy Ximena Erickson and Bonnie Miljour; sculpture by Tyler Keillor

文=Rachel Kaufman

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