調教師の溺死、通常と違うシャチの行動

2010.02.26
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フロリダ州、シーワールド・オーランドの調教師、ドーン・ブラチョワさんとシャチの“ナラニ”(2009年3月撮影)。ブラチョワさんは2010年2月24日、これとは別のシャチに命を奪われた。

Photograph from Barcroft/Fame Pictures
 フロリダ州のマリンパーク「シーワールド・オーランド」で24日、シャチの“シャム”が調教師を溺死させる事故が起きた。生物学者によれば、これはシャチの通常の行動によるものではないという。シャムとは、同施設が飼育する複数のシャチに付けられたステージネームである。 米国海洋大気庁(NOAA)の海洋生物学者で野生のシャチを研究するウェイン・ペリーマン氏は、「(野生の)シャチが人を襲ったという報告は聞いたことがない」と話す。同氏によれば、南極の氷の下から飛び出したシャチがカメラマンにぶつかった事例はあるが、この時シャチは「水の中にするりと戻って泳ぎ去った」という。

 シーワールド・オーランドの40歳のベテラン調教師、ドーン・ブラチョワさんが死亡したのは現地時間2月24日午後のことである。報道によれば、舞台の上では“シャム”と呼ばれる体重5440キロのオスのシャチ“ティリクム”が、ブラチョワさんの上腕をくわえて水中に引きずり込んだという。

“シャムとお食事”というショーの観客としてこの事故を目撃した人々は、ティリクムがブラチョワさんを振り回しながら、シーワールドのシャム・スタジアムのプールをすごいスピードで泳ぎ回ったと証言する。

 シャチが大型の獲物を振り回して解体することは知られているが、今回の調教師に対する行動はこれとは異なるとペリーマン氏は考えている。「彼女を食べるつもりはなかったと思う。単に手荒く扱っただけだ」。

 同氏の指摘によれば、人間に飼育されているほかの動物も調教師に噛みついたり襲いかかったりすることがある。シャチだけではないのだ。「本当はシャチの側の問題ではなく、飼育している大型の哺乳動物との接し方の問題だ。ゾウでもクマでも、どんな動物でも同じようにこの種の事故は起こりうる」。

 人間と同じように、シャチの中にも生まれつき気性の荒い者がいることも考えられる。「シャチのように社会生活を営むことに慣れている動物は、その性格もまちまちで、皆同じというわけではない。それに、人間と同じくシャチにも機嫌のいい日と悪い日がある」とペリーマン氏は説明する。

 ティリクムは過去に2件の死亡事故に関与している。1991年、カナダのブリティッシュ・コロンビア州にあるシーランド・オブ・ザ・パシフィックで、ティリクムを含む3頭のシャチが調教師を溺死させ、直後にこの施設は閉鎖された。

 1999年にはシーワールド・オーランドで、ティリクムの背中に横たわる男性の死体が発見された。捜査当局は、閉園後に忍び込んだ男性が低体温症を起こして溺死した可能性が高いと結論付けた。

Photograph from Barcroft/Fame Pictures

文=Ker Than

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