ニューヨーク州アルバニー郡のヘイルズ洞窟(Hailes Cave)で“白い鼻症候群”を発症したコウモリ。

Photograph courtesy N. Heaslip, New York State Department of Environmental Conservation
 アメリカ、テネシー州で最近実施された調査によると、アメリカ東部のコウモリに致死的な真菌感染が広がり、大量死しているという。 冬眠中のコウモリが発症する「白い鼻症候群(White-nose syndrome)」は、低温下で繁殖する真菌(カビ)と関連があり、翼、耳、鼻口部が白い粉末状のカビだらけになる。これまで、この病気の感染地域はアメリカ北東部の大西洋沿岸地域、バーモント州からバージニア州にかけての範囲にある洞窟のみだった。

 だが2010年2月16日、テネシー州野生生物資源局(TWRA)が、同州サリバン郡のウォーリーズ洞窟(Worley's Cave)で、発症した2匹のアメリカトウブアブラコウモリ(学名:perimyotis subflavus)が見つかったと発表した。

 この病気を追跡調査している自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)の広報担当者ジーナ・ハンコック氏は、「アメリカで最南端かつ最西端での発症例となる」と話す。

 2匹が見つかった洞窟は、バージニア州の感染地点から105キロほどしか離れておらず、このコウモリの飛行範囲内に収まっている。

 ニューヨーク州環境保全局(NYSDEC)のコウモリ専門家アラン・ヒックス氏はテネシー州の調査には関与していないが、「実際にバージニア州からテネシー州へ拡大したとなるとショックだ」と述べる。

 また、白い鼻症候群がテネシー州全体に広がれば、コウモリの複数の個体群が打撃を受け、2つの絶滅危惧種が死に絶える恐れもあるという。

「東部の洞窟には大規模な冬眠コロニーが少ないが、テネシー州には1つの洞窟に10万匹以上のコウモリが生息しているケースもある。致死率95%として考えると、膨大な数のコウモリがいなくなることになる」。

 白い鼻症候群は2007年に初めて確認されたが、その全容は解明されていない。真菌感染から死に至るプロセスが不明なだけでなく、そもそも真菌が感染動物の主な死因なのかどうかもはっきりしていない。

 科学者たちは、コウモリが冬眠コロニーに密集したときに病気が広がると考えている。

 発症したコウモリは、蓄えた脂肪を早い段階で使い果たして冬眠中に目覚めてしまう。空腹を満たそうと洞窟から飛び出すが、冬はエサとなる昆虫も見つからず間もなく餓死してしまう。

 冬眠時に群れをあまり作らないアメリカトウブアブラコウモリは、テネシー州でも比較的孤立した地域での感染に留まっているようだ。だが、科学者たちは絶滅危惧種のハイイロホオヒゲコウモリ(学名:Myotis grisescens)とインディアナホオヒゲコウモリ(学名:Myotis sodalis)に感染が広がることを懸念している。

 ハイイロホオヒゲコウモリは、夏になると感染の広がっているウォーリーズ洞窟を巣にする。TNCの洞窟・カルスト地帯担当マネージャー、コーリー・ホリデイ氏は、「ハイイロホオヒゲコウモリはごく一部の洞窟に大規模な集団を作って冬眠する。もし感染すれば、世界全体の個体数がわずか2、3年で深刻な危機に陥ることになる」と話す。

 われわれもこの病気の感染拡大に手を貸してはならない。感染地点には近寄らず、洞窟探検を楽しむときも用具を消毒することが大切だ。

「真菌の胞子に汚染されたブーツをはいて、隣の州の洞窟を歩き回ったとする。その結果感染が広がるということも、十分に考えられる」とホリデイ氏は言う。

 白い鼻症候群は人間には直接的な危険はないが、コウモリの大量死は非常に困ったことになる。

 TWRAの狩猟対象外・絶滅危惧種担当コーディネーターのリチャード・カーク氏は、「ほとんどのコウモリの種は主に昆虫を大量に捕食するため、害虫防除という点で公共サービスに多大な貢献をしていると言える。仮に50万匹のコウモリが消滅すれば、災難はわれわれに降りかかってくる。数百~数千トンもの昆虫近所の町や農場、森林を飛び回ることを想像して欲しい」と声明で述べている。

Photograph courtesy N. Heaslip, New York State Department of Environmental Conservation

文=Ker Than