今回の研究対象となったコウモリ6種のうちの1種、パラスシタナガコウモリ。

Photograph courtesy Brock Fenton
 コウモリは酒に酔っても何の問題もなく飛べるという最新の研究が発表された。中南米に生息する熱帯性コウモリは、常食とする発酵した果物や果汁に含まれるアルコール分に酔っても、生まれつき備わった“音波探知装置”を使ってしらふの時と同じように飛べるという。人間でいえば、法定血中アルコール濃度を超えても車の運転に支障がないようなものだ。「中には酒に弱い種もあるはずだと大いに期待してこの研究を始めたんだが、残念ながらコウモリは私たちの研究計画書を読んでくれなかったようだ」と、この研究の共著者でカナダにあるウェスタンオンタリオ大学の生物学者ブロック・フェントン氏は冗談めかして言う。

 フェントン氏の研究チームは2009年4月、中米ベリーズ北部でコウモリ6種、合計106匹を捕獲し、砂糖水と、酒類の主成分で酒酔いを引き起こすエタノールとのどちらかを与えた。与える量は個体の体重に合わせて調節した。さらに唾液を採取して血中アルコール濃度(BAC)を測定した。その結果、中にはBACが0.3%を上回ったものもいた。ちなみに、BACが0.08%以上ならばアメリカの50州すべてで飲酒運転の罪に問われる。

 次に林床を囲い、その中に障害物のあるコースを作ってコウモリを放した。フェントン氏は一般的な飲酒運転の検査に例えて、「直線上を真っすぐに歩けるかどうか検査するようなもの」と話す。ただしコウモリの場合は、吊るしたプラスチックの鎖に衝突せずに通り抜ければ合格である。

 また、コウモリが発する音波を記録し、「呂律が回らなくなっていないか」も調べた。コウモリは、自分が発した音波の反響で周囲の物体を感知して、獲物を捕らえたり障害物に衝突せずに飛行したりする。これをエコロケーション(反響定位)という。

 驚いたことに、ほろ酔い気分のはずのコウモリはどちらの検査にも完璧に合格した。

 さらに、コウモリの種類によって血中アルコール濃度が異なることもわかった。これはアルコール耐性に幅があることを示している。フェントン氏はこうした差を人間に例えて、「コルク栓のにおいを嗅ぐだけで酔ってしまう下戸もいれば、ボトルを2~3本飲み干しても酔ったそぶりを見せない酒豪もいる」と表現する。

 また、人間と同様にコウモリのアルコール耐性はアルコール摂取の頻度と量に一部左右される可能性がある。

 例えばフェントン氏によると、イスラエルで過去に行われた実験では、アルコールを摂取したエジプトルーセットオオコウモリは南北アメリカ大陸のコウモリよりも障害物に衝突する回数が多かったという。南北アメリカ大陸のコウモリがオオコウモリ科のコウモリよりアルコールに強いのは、日頃から発酵した食物をより多く摂取しているからかもしれない。

 南北アメリカ大陸のコウモリはアルコール耐性が高いために他の動物が食べられない果物を食べることができ、進化において優位に立った可能性があるとフェントン氏は付け加える。中南米に生息するコウモリの種類がその他の地域に比べて非常に多様であることもアルコール耐性で説明できる可能性もある。

 今後は、「アルコール飲料を販売する会社の後援を得て研究を深めたい」とフェントン氏は考えている。コウモリマークのバカルディだろうか?

 この研究は2010年2月1日公開のオンラインジャーナル「PLoS One」に掲載されている。

Photograph courtesy Brock Fenton

文=Christine Dell'Amore