明るい照明が当たる海水のみの水槽にウニを1匹ずつ入れ、まず6センチ幅の円盤1枚、次に10センチ幅の円盤1枚をウニから50センチ離して置いた。
「ウニはまったく扱いにくかった。中には高速道路で車のヘッドライトに照らされても微動だにしないシカのようにまったく動こうとしないものもいて、まるでシカがトゲトゲのボールになったみたいだった。だがウニにとっては、SFドラマに出てきそうな周囲が壁だけのやたら明るい部屋に閉じ込められたような状況なのかもしれない」とヨンセン氏は説明している。
実験の結果、小さい方の円盤を気に留めるウニはまったくなかった。しかし大きい方の円盤に対しては反応が2つに分かれ、逃げるように遠ざかるウニもいれば近寄ってくるウニもいた。
なぜ大きい方の円盤に対して異なる反応をしたのかは分からないが、おそらく天敵か餌物どちらの影なのか判断が分かれたためと推測される。いずれにしてもアメリカムラサキウニなどトゲの密度の濃いウニの“視界”にも限界があることを示す行動だという。ほかの種で実験を進めていけば、ウニの“視力”におけるトゲの密度の役割を解明できる可能性もあるという。
実際には眼を持たないウニだが、その視覚的能力はオウムガイやカブトガニなど眼を持つ海生の無脊柱動物に近いことも、今回の実験の結果から示唆されている。
Photograph courtesy Sonke Johnsen, Duke University