ダムが気象に影響、老朽化で災害も

2010.02.05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
アリゾナ州ページのコロラド川にあるグレン・キャニオン・ダムの空撮写真。

Photograph courtesy United States Bureau of Reclamation
 世界各地のダムが気象に影響を与えることがあり、降水量を増加させることが多いのではないかとの推測は以前からあった。ダムに貯められた水と、ダムが灌漑のために周囲の土地に供給する水とが大気中の水蒸気量を増加させ、それが雨となって降るというのである。 さらに今回、大量の貯水を持つダムの存在が、ダムの決壊につながる規模の豪雨をも増加させる恐れがあると警鐘を鳴らす最新の研究が発表された。ダムの老朽化が加速するアメリカでは特に心配な事態だという。

 テネシー州クックビルにあるテネシー工科大学のエンジニアであるフェイサル・ホサイン氏は最近、633カ所のダムとその周辺に設置された約100カ所の雨量計が示す降水量の調査を指揮した。

「私たちが注目しているのは平均降水量そのものより、貯水池の規模を決める際に、25年に1度しか起こらない規模の暴風雨のデータを使用していても、今ではその規模の暴風雨は15年に1度ほど起きているのではないかということだ。しかもその間にダムは老朽化している。大雨はダムの安全性に重大な影響を及ぼす」。

 コロラド大学ボルダー校の上級研究員ロジャー・ピールケ・シニア氏は、大規模ダムの貯水池と、灌漑農地の拡大などダムに伴う土地利用の変化との相乗効果で降雨パターンが変化すると指摘する。

 ピールケ氏とホサイン氏がこのテーマについて書いたレビュー論文は、2009年12月1日発行のアメリカ地球物理学連合の機関誌「EOS」誌に掲載されている。

 ダムによって気象パターンが変化するという考え方は新しいものではなく、こうした気象の変化を観測する研究は数十年前からあった。例えば、2006年にNASAが研究を率いて「Geophysical Research Letters」誌に発表した論文によると、中国の巨大な三峡ダムの影響で数百キロ離れた地域で月間降水量が1ミリ増加し、気温が摂氏0.7度低下したという。

 ホサイン氏の研究チームによる長期研究では、特に乾燥地域と半乾燥地域の豪雨のパターンがダムによって変化したことが示されている。「レーダー観測した結果、アメリカ南西部、ボツワナ、南アフリカ、スペイン南部、インド中央部でダム建設後に豪雨が降る傾向にあったことがわかった」とホサイン氏は説明する。

 同氏の研究チームは、ダムが建設された地域で年間降水量が最大4%増加したことを明らかにした。この研究は「Natural Hazards Review」誌と「Water Resources Research」誌に近日中に掲載される。

 この研究結果は特にアメリカの老朽化した水道インフラに関わるものだという。アメリカでは、2020年までに建設後50年以上を経過するダムが全体の85%に及ぶ。

 ホサイン氏は、カリフォルニア州アメリカンリバーのフォルサム・ダムを例に挙げて次のように話す。「いくつかのダムで最近は増水が問題になることが増え、放水路や水門をいつも以上に開放し続けなければならないという話をあちこちで聞く。ダム自体が増水事故を引き起こしたのか、それとも促進しただけなのかを解明するのが今後の課題だ」。

 しかしアメリカ開拓局は、建設後50年という年月はダムにとって老朽化のうちに入らないと異議を唱える。コロラド州デンバーにある同局ダム安全室の室長ブライアン・ベッカー氏は、「われわれは通常、ダムに寿命があるとは考えていない。適切に設計、建設、保守されていればダムは何百年でももつ」と主張する。

 また同氏は、貯水池が水循環に重大な影響を及ぼすという考えについて、「興味深いアイデアだが、水循環の変化には数多くの要因が絡んでいる」と注意を促す。例えば、世界全体としても地域レベルでも気候変動や自然変動が気象に影響を及ぼす可能性がある。開拓局ではダムのある場所すべてで水循環を調査し、その結果に応じてダムの改修を行っているが、ダムと水循環の変化の関係に特化した調査を行ったことはないという。

 1976年の有名なティートン・ダムの決壊など、1960年代と70年代に発生したダム決壊を契機に、連邦政府はダムの安全性に関するガイドラインの作成に動いたとベッカー氏は指摘する。「それ以降、アメリカ全土のダムの安全性は飛躍的に改善されているはずだ」。

Photograph courtesy United States Bureau of Reclamation

文=Anne Minard

  • このエントリーをはてなブックマークに追加