NASAの有人月探査計画、打ち切りへ

2010.02.01
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NASAの月探査ミッションに向けた試験ロケット「アレス1-X」。2009年10月28日、フロリダ州で打ち上げに成功した。

Photograph by Joe Raedle, Getty Images
 2010年2月1日にNASAの2011年度予算案が発表され、コンステレーション計画の打ち切りが明らかとなった。中止の対象には、老朽化したスペースシャトルの後継機としてNASAが過去4年間にわたって開発を進めてきた複数のロケットや宇宙船も含まれる。2020年までにアメリカ人宇宙飛行士が再び月面に着陸したとしても、乗っているのはNASAの宇宙船ではなさそうだ。 コンステレーション計画の打ち切りにより、2010年秋に予定している最後のスペースシャトル打ち上げのあとNASAの有人宇宙計画はなくなる。国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士の輸送はロシアの現行機など他国に依存することになる。

 打ち切りは以前から予想されていた。昨年9月、第三者委員会である米有人宇宙飛行計画審査委員会(通称オーガスティン委員会)が公表した報告書の中で、コンステレーション計画は2020年までにほんの数名の宇宙飛行士による二度目の月面着陸を行うだけでも大幅な予算拡大を必要とするだろうと指摘されていた。

 ホワイトハウスの行政管理予算局のサイトに掲載された声明文によると、オバマ米大統領によるコンステレーション計画の廃止決定は、同計画が「予算を超過し、予定より遅れ、そして画期的な新技術に投資できなかったためイノベーションが欠如している」ことが理由だという。

 コンステレーション計画は2005年に当時のジョージ・W・ブッシュ前大統領が打ち出したものだ。当初の計画には、新しい打ち上げ機と搭乗カプセルや月面探査車の開発、そして最終的には月の一方の極に月面基地を建設する計画が盛り込まれていた。

 NASAはその後、アレス1-Xの打ち上げ試験、ムーンバギーの実寸大プロトタイプの試作などを実施。さらには有人月面基地の維持に必要な水の存在を探るべく、月面に探査機を衝突させるミッションも行っている。

 だが、これまでにコンステレーション計画に投じられた資金が計画の中止で無駄になっても、NASAの2011年度の予算は2010年度よりも増額される見込みだ。当局の発表によると、2011年時点の案ではNASAに対して今後5年間で60億ドルの追加拠出を予定しており、2015年までに合計1000億ドルの予算が計上される。

 NASA長官のチャールズ・ボールデン氏は2月1日の記者会見で次のように述べている。「この予算はNASAがより一層歴史的な成果を達成するための道筋を作るものだ。なぜなら、イノベーションを推進し、新しい分野でアメリカ国民の雇用を創出し、さらには世界中の人々の関心を集めることになるからだ」。

 コンステレーション計画の打ち切りで削減された予算はロボットによる宇宙探査ミッションの資金に充てられる。また、民間企業による有人ロケット開発の支援にも使われるほか、いずれは地球低軌道を越えて深宇宙へと宇宙飛行士を送り出すための次世代型エンジンの開発費にも充てられる予定である。

 ボールデン氏は次のように続ける。「想像してほしい。1年近くではなく、わずか数週間で火星まで行ける日が来ることを。人類が内太陽系に進出し、月、小惑星、火星の有人探査がほぼ同時に成功して、続々と歴史的偉業を成し遂げていく日を。しかも、これらすべてが世界中の国々の協力によって実現する日を。オバマ大統領の発表したNASAの新計画はこうしたことを可能にするものだ」。

 先週のうちに非公式に伝わっていた予算削減のニュースに対し、スペースシャトル関連施設のあるフロリダ州選出の上院議員で元宇宙飛行士のビル・ネルソン氏は声明を発表した。その中でネルソン氏は、「オバマ政権は引退予定のシャトルの後継機への移行に時間をかけ過ぎており、宇宙開発でアメリカが握る主導権を中国とロシアに奪われる危険性を生み、実績のない民間企業の力に頼り過ぎている」と述べている。

 同じくフロリダ州選出の下院議員スザンヌ・コスマス氏もホワイトハウスの決定に異議を唱え、「大統領の予算案は宇宙探査への大胆な展望を欠き、21世紀に向けたイノベーションの促進に不可欠と大統領自身が表現した類のリーダーシップが不足している」との声明を発表した。

 一方この案の支持者は、新たな予算案の方が現実的で、宇宙開発を前進させる可能性を高めると評価する。宇宙開発関連の活動を行う市民団体セキュアワールド財団の理事であるレイ・ウィリアムソン氏はナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対し、「過去10年間の方針に比べれば継続できる可能性の高い方向に転換したと思う」と話す。

 また、元宇宙飛行士のバズ・オルドリン氏もNASAの新たな方針を強く支持するとのコメントを公表した。「アポロ11号の元宇宙飛行士として、宇宙探査で常に未踏の領域を切り開くことの重要性を私はよく承知している。実際のところ、我々は40年ほど前に既に月に到達している。宇宙に向かうための経費の抑制と、人類がより速く、より遠くに行くための鍵となる最新技術の開発に短期的に集中することこそが、21世紀も引き続きアメリカが宇宙開発分野のリーダーであり続けるために必要だ」。

Photograph by Joe Raedle, Getty Images

文=Ker Than

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