グラウンドホッグデー、リスが気候予測

2010.02.01
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グラウンドホッグデーの日、主役の“パンクサトーニーのフィル”を抱き上げるパンクサトーニー・グラウンドホッグ・クラブのメンバー(2005年撮影)。

Photograph by Jay Dickman, National Geographic Stock
【祭りの起源、最新技術を使ったメッセージ、そして“不老不死”の謎】

 2月2日は、北アメリカでは「グラウンドホッグデー(Groundhog Day)」と呼ぶ一大イベントの日である。今年もまた、アメリカのペンシルバニア州にある小さな町パンクサトーニーに数万人のお祭り好きが集結し、“パンクサトーニーのフィル”という名のかなり太ったグラウンドホッグ(ウッドチャックとも呼ばれる大型のリスの一種)の気候予測に注目する。 パンクサトーニーの地元紙「The Punxsutawney Spirit」の編集主任トム・チェーピン氏は次のように話す。「グラウンドホッグデーはさまざまな催し物が行われ、まるでロックコンサートのように盛り上がるが、集まった人々は節度をわきまえている。主役は1匹のグラウンドホッグだ」。

 例年、フィルは2月2日になると、町の郊外にあるゴブラーズノブ(Gobbler's Knob)という森の中の広場で、木の切り株を模した仮の巣穴から姿を現す。その際に自分の影を見て驚き巣穴に戻ってしまった場合は、アメリカ全土で冬が6週間は続くということになる。影を見ずにそのまま外へ出た場合は、春がすぐそこまで来ているサインとなる。

「パンクサトーニー・グラウンドホッグ・クラブ」という会で普段からフィルの世話をしている特別会員の集まり、「インナーサークル(Inner Circle)」の説明は次のとおりである。「グラウンドホッグデーの日、フィルは“グラウンドホッグ語”で予報の結果を告げる。インナーサークルはその言葉を翻訳して世界に伝えているだけだ」。

 19世紀には既にこの世に生を受けており、不老不死ともいわれるパンクサトーニーのフィルだが、最新技術にも精通しているようだ。2010年2月2日の予報結果は、携帯電話のテキストメッセージサービスやFacebookの更新など、まさに21世紀的な手法を通して世界に伝えられるという。

◆グラウンドホッグデーの起源

 パンクサトーニーのグラウンドホッグデー公式Webサイトによると、グラウンドホッグデーは、古代のキリスト教徒とローマ人の慣習がドイツで融合して誕生したものだという。

 ヨーロッパの初期キリスト教では、2月2日は聖燭祭(せいしょくさい、キャンドルマス)という祭日で、神父が信者に対して聖なるキャンドルを分け与えていた。キリストの生誕後40日を迎え、聖母マリアがエルサレムの神殿に彼を奉献したとされる日を祝う。

 それから時を経て、この日は気候予測と結び付くようになった。多神教徒のケルト人が2月1日に行っていた気候予測に関連した祭り「インボルク」と時期が近いことが影響しているとも考えられている。

 聖燭祭の日は天気も重要であり、この日が晴天だと冬がまだ続くという言い伝えもある。

 一方、古代ローマ人も、2月初めの数日間でその後の気候をうまく予測できると考えていた。ただし、ローマ帝国ではハリネズミ(hedgehog)を使っていたという。

 このような2つの慣習がドイツで融合し、ペンシルバニア州に居を定めたドイツ人移民によってアメリカに持ち込まれた。しかしアメリカにはハリネズミがいなかった。彼らはグラウンドホッグで代用して気候予測の儀式を続け、風物詩グラウンドホッグデーの誕生となる。

◆不死身のパンクサトーニーのフィル

 1887年、ペンシルバニア州パンクサトーニーに在住するグラウンドホッグ・ハンターのグループが前述の「パンクサトーニー・グラウンドホッグ・クラブ」という会を立ち上げた。そして1匹のグラウンドホッグにスポットを当て、「この毛皮をまといし聖なる予言者“パンクサトーニーのフィル”を今後唯一の“公式”な気候予測グラウンドホッグとする」と宣言した。同地でグラウンドホッグデーの祭りが行われるようになったもの同じころである。

 パンクサトーニーの言い伝えによると、フィルは毎年夏に行われる「グラウンドホッグピクニック(Groundhog Picnic)」の場で不老不死の薬を飲んでいるため123歳以上の寿命があるという。ちなみに、その瞬間を収めた証拠写真は存在しない。

 グラウンドホッグを大切に飼育しても寿命が10年を超えることはまずないため、フィルの長寿は統計的にあり得ないと言えるだろう。インナーサークルの主張とは異なるが、実は“パンクサトーニーのフィル”という名前が代々受け継がれているだけで、その名が“不老不死”だという可能性も否定できない。それでも、フィルの9キロという体重は、6キロという平均値と比べても並ではない。

 気候予測を行うとき以外は、フィルは町の図書館の別館として造られた「グラウンドホッグズー(Groundhog Zoo)」で暮らしている。

 グラウンドホッグはマーモット属の齧歯類(げっしるい)で、ウッドチャックとも呼ばれる。カナダ全域からアメリカ東部の原産で、夏の間はたらふくエサを食べ、秋に初霜が降りてから春が来るまでは地面に掘った巣穴で心拍数と体温を大幅に下げて冬眠する。野原や小川、道路などでよく見かけられ、草などの植物、果物、樹皮を常食する。 グラウンドホッグデーの予測:コインを投げた方が正確?

 信奉者は「フィルの予測は100%正確だ」と主張するが、アメリカ国立気候データセンター(NCDC)の調査によると、これまで当たったのは40%にすぎないという。しかし「予測精度にこだわる人は何もわかっていない」と前出のチェーピン氏は話す。「楽しんだ方が勝ちなのさ」。

◆フィルの跡を継ぐグラウンドホッグデー・ロボット?

 ただし、1年に1度のこのイベントを不快に感じている人々もいる。先日、動物の権利擁護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」が、インナーサークルの代表者あてに手紙を送った。そこには、「フィルを引退させて保護区へ送り、代わりにグラウンドホッグのロボットを使うよう勧告する」と書かれている。

 これに対しチェーピン氏は、売名行為にすぎないと片付ける。「PETAがフィルを気に掛けるのは1年で1日だけ。ほかの364日間に何か言ってきたことは無いね。ロボットというアイデアは面白いが、フィルは当分引退しないだろうよ」。

Photograph by Jay Dickman, National Geographic Stock

文=Ker Than

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