石器人が牛乳と出会ったのはさらに2000年前だった

2008.08.06
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トルコ、ヨーロッパ南東部、そして中東で発掘された石器時代後期の陶器に、乳脂肪の痕跡があったことが報告された(2008年8月)。トルコ北西部のウシ飼いが、約8500年前に登場した世界初の酪農家であることを、古い牛乳容器(上はシリアで発掘された同様の陶器)が示している。

Photograph courtesy Richard Evershed
 有史以前の人類が牛乳を利用し始めたのは、従来の研究結果より2000年早い8500年前頃であることが、新たに発掘された牛乳の容器から分かった。今回の発見は、人類で最初に動物の牛乳を利用したのは、トルコ北西部の牛飼いであることを示している。ただし、牛乳を飲んでいたわけではなく、バターやヨーグルト、チーズなどに加工していたようだ。 イギリスのブリストル大学で生物地球化学を研究し、今回の論文を執筆したリチャード・エバーシェッド教授は「これは、人類が牛乳を利用したことを示す直接の証拠としては世界最古だ」と述べている。エバーシェッド氏のチームは、トルコ、ヨーロッパ南東部、そして中東で発掘された2200点以上の石器時代後期の陶器を分析した。マルマラ海地区で発掘された紀元前6500年頃のものと思われる素焼きの陶器には、獣の脂ではない乳脂肪の痕跡が明確に残っている。また、同じ場所から発掘された動物の骨から、当時の家畜はヤギやヒツジではなくウシであることが判明した。

「従来の専門家は、人類初の酪農はヒツジやヤギの乳を利用していたと考えていた」とエバーシェッド氏は言う。トルコ北西部は、ほかの地域と比較して「降雨量が多く牧草が豊かだったため、ウシを飼うには最適な条件を備えていたと考えられる」と研究チームは報告している。エバーシェッド氏によれば、陶器の発明とバターやヨーグルト、チーズなどの乳製品の発明は相関的に起こったようだ。

 ドイツ南西部マインツ市にあるヨハネス・グーテンベルグ大学考古学研究所のヨアヒム・ブルガー氏は、独自の調査により、石器時代には牛乳をそのまま飲む習慣はなかったと結論付けている。その理由は、7000年前までの成人は一様に乳糖不耐症であったからだ。乳糖不耐症は乳糖の消化酵素が不足して消化不良や下痢などの症状を引き起こす。ただし、乳糖は乳製品への加工段階で分解されるため、当時の人々が牛乳を飲めなかったからといって牛乳が食用にならなかったわけではない、とブルガー氏は述べている。

 牛乳がそのまま飲まれるようになったのは、1000年から2000年ほど後と考えられる。おそらくその頃までには酪農文化がヨーロッパにまで広がり、突然変異によって、成人でも乳糖を分解できる人々が現れた。「ヨーロッパの中心部には採集狩猟生活者が住んでおり、乳糖を分解できる遺伝子を持つことを知らずに酪農文化と出会い、当然の選択肢として牛乳を飲むようになった結果、飲み物としての利用が爆発的に広がったのだろう」とブルガー氏は説明した。

 冒頭の研究を行ったエバーシェッド氏は、酪農文化は人類の文明を発達させた主要な原動力であったと述べている。栄養価の高い食料が一年中手に入るようになり、主食を大規模に生産できるようになったからだ。「牛乳との出会いがなければ、人類の歴史は大きく変わっていただろう。ヨーロッパ中部から北部における遺伝子供給源の30~40%がいまとは違っていて、別の人種がヨーロッパの覇権を握っていたかもしれないし、ほかにもさまざまな違いが生まれていただろう」と語った。

Photograph courtesy Richard Evershed

文=James Owen

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