発見された5つの惑星は、それぞれケプラー4b、5b、6b、7b、8bと名付けられた。最も小さいケプラー4bは海王星(地球の約4倍)と同じくらいの大きさだが、大きさに比べてかなりの質量を持つ。NASAが温度を推定したところ、新惑星はすべて溶岩よりも熱く、金をドロドロに溶かすほどの熱を持っているという。
ケプラー・ミッションの主任研究員ウィリアム・ボルッキー氏は1月4日、ワシントンD.C.で開催中のアメリカ天文学会の年次会合で次のように話した。「5つの新惑星は摂氏1090~1650度の温度がある。その1つ、ケプラー7bは発泡スチロールほどの密度しか無く、系外惑星の中で最も低密度の部類に入る。こういったホット・ジュピターで生命を探しても無駄だ。地球型の系外惑星を見つけなくては」。
ケプラー宇宙望遠鏡は、ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)の軌道を周回する岩石質の地球型惑星を発見するために打ち上げられた。ハビタブルゾーンとは、惑星が液体の水を保持できる程度の熱を恒星から得られる領域を指す。
今回の発見はまだ小手調べだが、ケプラーの観測装置が期待通りに稼働していることを示す重要なステップとなった。アメリカにあるカリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学者グレッグ・ラフリン氏は、「今後数年で期待できる成果に、非常に興味深いヒントが得られた」と話す。
ケプラー宇宙望遠鏡は、周回する系外惑星が中心の恒星の手前を通過(トランジット)する際に恒星の光が遮られて減少する変化を検知する。打ち上げ後、観測活動を始めてから最初の6週間で今回の5つの新惑星を発見した。
ケプラーの発見は視線速度法と呼ぶ観測で裏付けが行われた。周回する惑星の引力によって恒星の軌道に生じる“揺らぎ”を分析する手法である。「視線速度法による観測結果は、ケプラーのデータと非常に美しい整合性を見せた」と前述のボルッキー氏は話す。
2つの観測手法は互いの結果を裏付けるだけではない。それぞれがもたらす情報は質が異なり、全体像を掴む上でどちらも欠かせない。視線速度法からは惑星の質量と軌道に関する詳細情報が得られ、ケプラーのトランジット法では中心の恒星に対する惑星の大きさが判明する。両方のデータから、惑星の密度がわかるというわけだ。
ケプラー・ミッションをはじめとした“プラネット・ハンティング(系外惑星探し)”により、その密度分布は一定ではないことが判明している。例えば最も大きな部類の惑星の場合、正体不明のなんらかの熱源によって予想以上に膨張していることがある。「今回のケプラー5bも、木星よりはるかに大きな質量を持つが密度は水より低い」と、ケプラー・ミッションの一員デミタール・サセロフ氏は話す。
ケプラー・ミッションで確認された5つの惑星のほかにも、最初の数カ月間のデータの中には数百の“惑星候補”が含まれている。今後、3年半は続くミッションで確認が進み、新惑星発見の報告が期待できそうだ。
「ただし」と前述のラフリン氏は言う。「ハビタブルゾーンを周回する地球型惑星は、確認まで数年かかるだろう」。ハビタブルゾーンの軌道は恒星からかなり遠方にあるため、ホット・ジュピターに比べて公転が1回完了するたびに時間が非常にかかる。つまり、トランジットのタイミングをとらえるチャンスが減るのだ。
ラフリン氏は続ける。「“ハビタブルゾーンで惑星を発見した”という確信を得られるには、時間をかけてトランジットを3~4回観測する必要がある。まずは今回の成果によって、同じような特徴の惑星でも個性に富んでいるとよくわかった。今後も地道に観測を続けていくつもりだ」。
Illustration courtesy William Borucki, NASA