フカヒレDNA鑑定、乱獲地域を特定

2009.12.03
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メキシコのサンタロサリアで、メスのアオザメのヒレが切り取られている(撮影日不明)。

 フカヒレとして売られるサメの出身地を探るため、初めてDNA分析による調査が実施され、市場に出回っているシュモクザメのヒレの多くが、西大西洋で絶滅危機に陥っている個体群のものであることが、2009年12月発表の調査結果で明らかになった。

Photograph by Brian J. Skerry, NGS
 新たな科学的調査によって、アジアのフカヒレスープの犠牲になるシュモクザメの多くは、西大西洋に生息していたことがわかった。今回の調査ではフカヒレの原産地を探るため、初めてDNA分析が用いられた。香港の世界最大のフカヒレ市場に集められたアカシュモクザメのDNAから出身を追跡した結果、その身元は大西洋やインド太平洋の希少な個体群と判明した。 フカヒレは、高級料理であるスープの材料としてアジア市場に流入する。年間で最大7300万頭のサメが犠牲となり、シュモクザメは最大300万頭を占める。ヒレを切り取られたサメは海へ投げ捨てられ、そのまま死に至ることが多い。

 世界市場へ流出する膨大なフカヒレの取引は通常、秘密裏に行われている。そのため、保護関係者にとってサメの捕獲海域の把握が困難だった。また行政も、自国領海内で捕獲されているサメの数を認識しない限りその取引を管理できない。

 この調査研究を率いたニューヨーク州立大学ストーニーブルック校海洋保護科学研究所のデミアン・チャップマン氏は、次のように語る。「フカヒレ市場の現状は無法地帯で、まるでかつてのアメリカ西部のようだ。だが、最新のDNA技術を用いれば取引の監視に役立つかもしれない」。同氏はかつて、ノバサウスイースタン大学でDNA研究に取り組んでいた経歴を持つ。

 例えば、フカヒレのDNAから割り出されたデータに基づき、乱獲予防のために漁獲量割り当てを設定するなどが考えられる。

 チャップマン氏らは香港市場で、シュモクザメ62頭分のフカヒレから少量の細胞サンプルを採取した。広く珍重されているシュモクザメのヒレは、煮詰めてスープにすると麺のような独特の食感が生まれ、香港では1枚あたり1万円ほどで取引される場合も珍しくない。

 研究チームは、採取したサメゲノムDNAの特定部位配列を、世界各地の研究調査から得られたシュモ

クザメの配列と比較した。

 その結果、香港市場の62頭分のうち57頭分が、大西洋またはインド太平洋(インド洋から太平洋にかけての暖流域)に生息していたサメのフカヒレであると判明した。57頭分のうち21%は、メキシコ湾や北アメリカ大陸の大西洋沿岸から南はブラジル沿岸まで、西大西洋に生息していたサメだった。これらの地域のサメは、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧IB類(絶滅危機)に指定されている。

「漁業資源の乏しい西大西洋の海で、これほど多くのフカヒレが捕獲されているとは想定外だ。それも資源量を上回るペースで続いているようだ」とチャップマン氏は話している。

 同氏は次のように続ける。「サメは世界各地で急激に減少しつつある。海の食物連鎖の頂点に君臨するサメを失うと、海洋環境にもわれわれにも、多大な悪影響が及ぶ恐れがある。サメのエサとなるアカエイのような種が大量に増えて沿岸部に押し寄せ、商業用の魚を駆逐することも考えられる。この地球上に500万年間近く生息してきたサメを、自分達の世代で絶滅させてしまうのは愚かなことだ」。

 この研究は、12月3日発行の「Endangered Species Research」誌に掲載されている。

Photograph by Brian J. Skerry, NGS

文=Christine Dell'Amore

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