“死体”を残さない最大の超新星爆発

2009.12.02
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星の中心核内部で作られた放射性元素が星の外側へ向けた圧力を生み、星が自身の重力で崩壊するのを防ぐ。通常の大質量星では、核融合の燃料となる物質がなくなると、外向きの圧力が急速に低下するため、星は崩壊する。このプロセスが超新星爆発を引き起こし、爆発後はブラックホールか中性子星が残される。

 だが、2009年12月に発表された研究によると、星の中心核の温度が急激に上昇して不安定になり、残骸が一切残らないほどの巨大な爆発に至るという、珍しいタイプの超新星爆発の存在が確認された可能性があるという。

Picture courtesy NASA/CXC/M. Weiss
 観測史上最大規模として知られる超新星爆発が、星が“死体”を一切残さずに最期を迎えるという極めて珍しい種類の爆発だった可能性があることが、最新の研究でわかった。この超新星SN 2007biは、太陽の140倍以上の質量を持つ超大質量星が起こすと理論上考えられていた“対不安定型超新星爆発(pair-instability supernova)”を起こしたとみられる。 ほとんどの超新星爆発は、ブラックホールか、中性子星と呼ばれる非常に密度の高い星の残骸を残す。しかし対不安定型超新星爆発の場合、爆発のエネルギーが非常に大きいため、星全体が吹き飛び、残骸が残らない。ただ、太陽の100倍を超える質量の星は極めて少ないため、それが超新星爆発を起こす瞬間をとらえるのは非常に困難であった。

 SN 2007biは、自動式望遠鏡を使用して撮影した遠く離れた矮小銀河の中に存在が確認されたもので、通常の超新星爆発の約40倍もの明るさを持ち、爆発の明るさが最大に達するまでにかかった時間も通常の約3倍であった。「超新星爆発がここまで明るくなり、ここまで長く時間がかかったことを考えると、極めて質量の大きい星だったに違いない」。研究の共著者で、カリフォルニア州にあるローレンス・バークレー国立研究所の宇宙物理学者ピーター・ニュージェント氏は語る。

 大質量星は通常、核融合を続けるための物質が尽きると死に至り、中心核には鉄のみが残される。核融合が止まると、それまで中心核から放出されていた光子の流れも止まる。星が生きている段階では、この光子の流れは星の外側へ向かう圧力となり、星が自身の重力によって崩壊するのを防いでいる。この圧力がなくなると星は崩壊し、超新星爆発が起きる。爆発の過程で中心核の収縮が進み、ブラックホールか中性子星が残される。

 だが、非常に大きな質量の星の最期は、これとは異なる。核融合が止まると中心核の温度が急激に上昇し、光子が分解し電子と陽電子の対が生成される。その結果、星の温度と圧力の関係が不安定になり、星が跡形もなく消え去るほどの巨大な爆発が起きる。星の残骸はすべて宇宙空間に飛散するが、ガス雲が拡散する様子がしばらく観測できる場合もある。

 対不安定型超新星爆発の存在は30年以上も前に予想されており、その証拠となりそうな観測結果も、1999年や2006年の明るい超新星爆発を含めていくつか示されてきたが、結論は出ていないとニュージェント氏は話す。

しかしSN 2007biは、対不安定型超新星爆発の条件をほぼ完全に満たしており、事実だと確認されれば、初期の宇宙において星が形成されるプロセスの解明に向け、非常に大きな示唆を与える可能性があるという。なぜなら、初期の宇宙では、太陽の何百倍もの質量を持つ星が存在していたと考えられるため、今よりもかなり頻繁に対不安定型超新星爆発が起きていた可能性が高いからだ。

 このように巨大な星が強力な爆発を起こしたことで、原始の宇宙に破片がばら撒かれ、それが未来の星の“種”となったと考えられる。

 対不安定型の超新星爆発はめったに起きるものではないのだろうが、宇宙の進化についての理解を深めるうえで非常に重要であることは事実であると、ニュージェント氏は語っている。

 この観測結果は、「Nature」誌12月3日号に掲載された。

Picture courtesy NASA/CXC/M. Weiss

文=Ker Than

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