シュモクザメの眼における電気的活動の分析に基づき、頭がT字型であるために人間のように奥行きを正確に認識できる優れた立体的視覚を持っていることがわかったという。このような立体視能力は、動きの速い獲物を捕えるのに役立っていると考えられる。「例えばイカは三次元的に素早く泳ぎ回る。このようにすばしこい獲物を狩るのは本当に難しいはずだ」。
カジウラ氏の研究チームは、世界で生息が確認されている9種のシュモクザメの中から、フロリダのウチワシュモクザメ、オーストラリアのインドシュモクザメ、ハワイのアカシュモクザメの3種を選び、それぞれ最低6頭について視野を調べる実験を行った。
実験対象のサメはすべて生息水域で捕獲した後、現地の大学の研究室に移送され、実験後はもとの海に戻された。アカシュモクザメは体長が4メートルを超えることもあるため、幼魚を捕獲した。研究室では、それぞれのサメの左右の眼の周囲に、弱い光を水平方向と垂直方向に弧を描くように当て、角膜のすぐ下に埋め込んだ電極で電気的活動を記録した。
その結果、シュモクザメの左右の眼の視野が重なる部分の面積は、頭の尖ったハナグロザメやニシレモンザメの3倍あることがわかった。両眼が前を向いてついている動物の場合、視野が重なる部分が大きいために視覚が立体的になり、奥行きを正確に認識できる。
ただし、研究を率いたフロリダ・アトランティック大学のミシェル・マコーム氏によると、シュモクザメは広い視野を得るために代償を支払っているという。シュモクザメの場合、左右の眼がかなり離れているため、頭の真正面にある死角がほかのサメより大きいのだ。「実際、シュモクザメの頭のすぐ前で小魚が群をなしていたというダイバーの目撃談もある。まるでサメをからかうように泳いでいたらしい」。
この研究は2009年11月27日発行の「Journal of Experimental Biology」誌に掲載されている。
Photograph by Brian Skerry, NGS