微生物の糞、地球外生命探査の手掛かり

2009.11.20
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溶岩の壁を覆う明るいオレンジ色の染み。ポルトガル、アゾレス諸島のサンミゲル島にあるカルバオン洞窟で撮影(撮影日不明)。

 2009年10月に発表された研究によると、洞窟の壁面に住む微生物の排泄物が敷き詰められてカラフルな鉱物の堆積物に見えることがあり、この写真の分泌物もその一例だという。

Photograph courtesy Guy Caniaux
 ただの鉱物だと長い間考えられていた洞窟内のカラフルな堆積物が、実は新種の微生物の排泄物が積もってできたものであることがわかった。2009年10月に開催されたアメリカ地質学会で発表された研究によるとこの発見は、火星などの天体で生命を探す際の手掛りになるかもしれないという。 ニューメキシコ州ソコロにあるニューメキシコ工科大学の洞窟学者ペネロペ・ボストン氏は次のように語る。「生物とは無関係だと思って見過してしまいそうなものも、注意して調べる必要があるということだ。実は生物と関係があるかもしれない」。

 こうした微生物は、ハワイ、ニューメキシコ、そして大西洋の火山諸島であるポルトガルのアゾレス諸島にある溶岩洞の壁面から見つかった。

 ニューメキシコ大学の地球微生物学者ダイアナ・ノーサップ氏は次のように説明する。「ハワイでは洞窟の天井から今にも滴り落ちそうな青緑色の美しい分泌物、ニューメキシコでは噛むと歯応えのよさそうな金色の鉱物のようなものからなる帯状の模様、アゾレス諸島では無数の強烈なピンク色の六角形の点からなる模様が発見された。これらはすべて排泄物、つまり微生物の糞だ」。

 溶岩洞は、活火山から流れ出した溶岩流の表面だけが冷えて固まり、内部の熱い溶岩が流れ出てできた細長い洞窟である。

 ノーサップ氏の研究チームは1994年から、溶岩洞などの洞窟に見られる珍しい堆積物について顕微鏡調査やDNAの有無の調査などを行ってきた。

 カンザス州立大学の地球化学者サウガタ・ダッタ氏は今回の研究に参加していないが、ノーサップ氏らの発見を高く評価する。これまでも地球以外の惑星で生命の存在の証拠を探すには溶岩洞が最適な場所ではないかとされていたが、ノーサップ氏らの発見はそれをさらに裏付けるものだという。

 火星の軌道衛星が2007年に撮影した画像に、溶岩洞の天井が崩壊したものと思われる暗い穴が複数写っていた。「洞窟はほかの環境と異なり、物理的条件と化学的条件が安定しているため、液体から染み出た鉱物が凝固するプロセスや微生物の成長が促進されると考えられている」とダッタ氏は話す。

 火星では大昔に、洞窟に染み込んだ水が鉱物を地下に運び、太古の微生物の餌となっていた可能性がある。また、こうした洞窟の内部は地表の過酷な条件から遮断されるため、火星の生物の化石が良い状態で長い間残っている可能性も高くなるという。

 こうして洞窟に住む微生物がどのような痕跡を残すのかが判明したことで、火星の洞窟で同様の生命の痕跡を探すミッションが行われる可能性も出てきた。

 ニューメキシコ工科大学のボストン氏は研究の意義をこう強調する。「ノーサップ氏は、こうした洞窟の中にあるものについて、いわば観察図鑑を作っているのだ。私たちは地球上のあらゆる種類の洞窟を調査したが、その結果、洞窟の内部の環境が外部と大きく異なることが明らかになっている。おそらく火星でも同じだろう」。

Photograph courtesy Guy Caniaux

文=Richard A. Lovett

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