サンゴ礁の掃除魚、“制服”で存在示す

2009.08.20
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
フィジー諸島のレインボーリーフで、青と黄色の縞模様を身にまとったホンソメワケベラが、オスのスミレナガハナダイを熱心に掃除している。

 2009年8月に発表された研究によると、ベラやハゼなどの掃除魚は、特定の色や模様を持つ”制服”を周囲にアピールして捕食される危険を回避しているという。

Photograph by Tim Laman
 サンゴ礁に生息する“掃除魚(そうじうお)”の体表は、警察官や看護師の制服のように、自らの”職業”を周囲に示す機能を持つことが新たな研究で明らかになった。この機能は、掃除する相手の魚に食べられてしまう危険を防ぐのにも一役買っているという。 サンゴ礁に生息する掃除魚は、自分より大きな魚を“クリーニング・ステーション”と呼ばれる場所に招き入れ、クライアント(顧客)の体表から寄生虫を除去する。掃除された魚たちは身ぎれいになり、掃除魚は容易にエサにありつくことができる。「まさしく相互利益の関係だ」と研究者は述べている。

 しかし、掃除魚ぐらいの小さな魚をエサとする大型魚は、どのようにして掃除魚を捕食対象ではないと判別しているのか。この謎については、長い間解明されないままだった。

 そこで、オーストラリアにあるクイーンズランド大学のカレン・チェイニー氏の研究チームは、体の色と模様によって掃除魚が自らを差別化しているという仮説を立て、それに基づいて調査を行った。

 その結果、ハゼやベラなどの掃除魚は、体の黒い縞模様を周囲に見せつけようとする傾向が強いということがわかった。青や黄色の斑点も、その黒を際立たせる役割を担っているようだ。チェイニー氏は電子メールでの取材に対し、「サンゴ礁の掃除魚は自分の”制服”を周囲にアピールし、他種の魚と容易に区別されるようにしているのではないか」と述べている。

 研究チームはさらにオーストラリアのグレートバリアリーフで調査を実施し、掃除魚のクライアントとして知られる数種の野生魚の挙動を観察した。さまざまな色と模様を加えた魚の模型を使って実験したところ、クリーニング・ステーションへ多くの魚を引き寄せることができたのは、縞模様を描いた青色の模型だったという。

 また同チームは、魚の色覚を確認する一般的な手法を用いて、クライアントであるカマス、スズメダイ、クロハギの3種それぞれの色に対する反応を調べた。この3種は視覚系に違いがあるが、サンゴ礁において最も知覚しやすい色が青である点は共通していることがわかった。黄色は海の青や縞模様の黒によって際立つという。クライアントは、青や黄色、縞模様の黒によって掃除魚を見分けているというわけだ。

「今回の研究は、掃除の習性を身につけた後で掃除魚の体表が変化していった可能性も示唆している」とチェイニー氏は話している。青や黄色の模様は、多くの魚を引き寄せるために、長い時間をかけて掃除魚が獲得したものなのかもしれない。

 この研究は、8月11日発行の「Current Biology」誌に掲載されている。

Photograph by Tim Laman

文=Christine Dell'Amore

  • このエントリーをはてなブックマークに追加