古代の生物大量絶滅につながる海中の火山活動

2008.07.16
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イタリア中部にあるコンテッサの地層の前に立つ人々。かつては海に覆われていた色の異なる堆積層が、酸素のある状態から無酸素の状態への変遷を示している。約9300万年前に海中の火山活動が急激に活発になり、海から酸素が奪われていた。2008年7月16日に発表された新しい研究で、海洋生物の大量絶滅につながる火山活動の証拠が明らかになった。

Photograph courtesy S. Turgeon
 約9300万年前に海中の火山活動が急激に活発になり、海から酸素が奪われていた…。海洋生物の大量絶滅につながる火山活動の証拠が新研究で明らかになった。 カナダのアルバータ大学の地球科学者、スティーブン・タージオン氏のチームでは、今回初めて、生物大量絶滅に関わる海中の火成活動(冷却するマグマから岩石が形成される活動)を直接特定することができた。

 タージオン氏によると、当時の地球の気候は温暖で蒸し暑く、海洋の循環は不活発だったという。現在のアラスカのノーススロープにあたる地域でも、当時はヤシの木が生えており、二酸化炭素レベルは現在の濃度の3~12倍と高かった。二酸化炭素が急増したのは、地球の地殻プレートの急速な変動によって火山活動が活発化したためだという。

 科学者たちはこれまで、海洋で酸素が激減し生物が大量絶滅した「OAE2」(OAE:Oceanic Anoxic Events:海洋無酸素事変)と呼ばれる現象の原因として、海中の火山活動の可能性を疑ってきたが、その明確な証拠は見つかっていなかった。

 OAE2が起きると、酸素が不可欠な海洋生物は生存が不可能になる。地質記録によると、この事変は二酸化炭素レベルが現在の濃度より数倍高い時期に発生していた。

 タージオン氏のチームでは、南アメリカ北東部とイタリア中部で、白亜紀(1億4500万~6500万年前)の中期に海中にあった岩石の地層を分析し、OAE2を引き起こした現象の手掛かりを求めて、金属元素のオスミウムの痕跡を探した。オスミウムの痕跡には、海に流れ込んだ河川堆積物に由来するタイプと、火成活動や宇宙からの物質(隕石や宇宙塵など)に由来するタイプがある。

 分析の結果、OAE2が起きる直前に、オスミウムの痕跡は河川堆積物由来のタイプから火成活動または宇宙由来のタイプへと大きく変化していることがわかった。さらに、この変化の時期に相当する9300万年前には、隕石や彗星が衝突した証拠は存在しない。したがって、このオスミウムの痕跡は30~50層の地層を形成するような火成活動に由来するものだと考えられる。その火成活動が大量絶滅に誘因として関与していたのだ。

 ペンシルバニア州立大学の地質学者、ティモシー・ブラロワー氏によると、OAE2は中央アメリカとカリブ海の下にあるカリブ海プレートを形成した火成活動に関係している可能性が高いという。海中で火山活動が活発になると大量の金属が海中に放出される。その結果、植物性プランクトンと呼ばれる微細な海生植物の成長も促進され、大量の有機物が産出した。「植物性プランクトンが死ぬと、大量の有機物は海の中を下降してゆき、その途中で海から酸素を奪っていった。こうして深海が無酸素状態になったために、海底に生息していた生物が絶滅したのだろう」とブラロワー氏は説明している。

Photograph courtesy S. Turgeon

文=John Roach

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